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成年後見の申立て手続き|費用・必要書類・期間と2026年の制度改正

成年後見の申立て手続き 家族信託・成年後見
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「親が認知症になり、預金を下ろせなくなった」

「実家を売りたいが、親が契約できる状態ではない」

こうしたときに使うのが、家庭裁判所の成年後見制度です。

この記事では、裁判所の公式の案内と最新の統計(令和7年)をもとに説明します。

扱うのは、申立ての手続き・費用・必要書類・期間と、2026年6月に成立した制度の見直しです。

先に結論
  • 申立先は本人の住所地の家庭裁判所。申立てできるのは本人・配偶者・4親等内の親族など
  • 費用は収入印紙800円+登記手数料2,600円+郵便切手。鑑定をする場合は鑑定費用(約86%が10万円以下)
  • 申立てから4か月以内に約94%が終わる
  • 後見人に親族が選ばれるのは約16%。残りは弁護士・司法書士などの専門職
  • 2026年6月に改正民法が成立。2028年12月までに後見・保佐は「補助」に一本化される

この記事の監修:行政書士(2018年開業・社会保険労務士試験合格)。

法務局・裁判所・国税庁などの一次資料で内容を確認しています。

成年後見制度とは

法定後見と任意後見の違い

成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などで判断能力が不十分な人を、法律の面で支える制度です。

家庭裁判所が選んだ成年後見人などが、本人に代わって預金の管理や契約をしたり、本人が結んだ不利な契約を取り消したりします。

法定後見と任意後見

種類 いつ使う 後見人を決めるのは
法定後見 すでに判断能力が不十分になったあと 家庭裁判所
任意後見 元気なうちに契約しておき、判断能力が落ちたら使う 本人(契約で決める)

親がすでに認知症と診断され、預金の手続きなどに困っている場合は、法定後見を使うことになります。

法定後見の3つの類型(現在の制度)

現在の法定後見は、本人の判断能力の程度によって3つに分かれています。

類型 本人の状態 支える人
後見 判断能力が欠けているのが通常の状態 成年後見人(財産に関するすべての法律行為を代理)
保佐 判断能力が著しく不十分 保佐人(重要な財産行為に同意など)
補助 判断能力が不十分 補助人(申立てで決めた特定の行為を支援)

この3つの類型は、2026年6月に成立した改正民法で見直されることが決まっています(後の章で説明します)。

どんなときに申し立てるのか(統計で見る動機)

最高裁判所の「成年後見関係事件の概況(令和7年)」によると、申立ての主な動機は次のとおりです(複数回答)。

申立ての動機 割合
預貯金等の管理・解約 93.4%
身上保護(介護・施設入所などの手配) 74.2%
介護保険契約 45.7%
不動産の処分 36.3%
相続手続 25.6%
保険金受取 17.8%

「親の預金を下ろせない」「施設に入る費用のために実家を売りたい」「父が亡くなり、認知症の母を含めて遺産分割をしたい」といった場面が典型です。

遺産分割は相続人全員の合意が必要なので、判断能力が不十分な相続人がいると、後見人などが代わりに参加する必要があります。

申立ての手続き(裁判所の案内より)

成年後見の申立ての費用

項目 内容
申立てができる人 本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、検察官など(市区町村長が申し立てることもある)
申立先 本人の住所地の家庭裁判所
申立手数料 収入印紙800円分
登記手数料 収入印紙2,600円分
郵便切手 裁判所ごとに違う
鑑定費用 鑑定が必要な場合に申立人が負担することがある

4親等内の親族には、子・孫・兄弟姉妹・甥・姪・いとこなどが含まれます。

申立先は、申し立てる人ではなく本人の住所地が基準です。

親が施設に住民票を移している場合は、施設の所在地の家庭裁判所になります。

鑑定と費用の実際

後見を始めるには、本人の判断能力について医師の鑑定が必要になる場合があります。

ただし、令和7年に鑑定をしたのは全体の約3.4%で、多くは診断書などで判断されています。

  • 鑑定費用は、5万円以下が約43.7%、10万円以下が約85.8%
  • 鑑定の期間は、1か月以内が約52.6%

保佐・補助を申し立てる場合

本人の判断能力がある程度残っている場合は、保佐や補助の申立てになります。

  • 保佐:借金や不動産の売買など、法律で決まった重要な行為に保佐人の同意が必要になる。代理権が必要なら、代理権を付ける申立ても一緒にする
  • 補助:申立てで決めた特定の行為だけを支える。補助を始めるには本人の同意が必要

代理権を付ける申立てなどを一緒にする場合は、申立てごとに収入印紙が加わります。

どの類型になるかは、医師の診断書などをもとに家庭裁判所が判断します。

申立ての前にやっておくこと

  • 家族で話し合う:誰が申立人になり、誰を候補者にするか。親族の中に反対する人がいないか
  • かかりつけ医に相談する:成年後見制度用の診断書を書いてもらえるか確認する
  • ケアマネジャーなどに相談する:本人情報シートの作成を頼む
  • 地域の相談窓口を使う:市区町村や地域包括支援センター、権利擁護センターなどで、手続きの相談ができる

申立て費用や後見人の報酬を払うのが難しい人のために、費用を助成する制度を設けている市区町村もあります。

身寄りがない人などは、市区町村長が申立てをすることもあります。住んでいる市区町村の窓口で確認しましょう。

申立てに必要な書類

裁判所が示している標準的な添付書類は、次のとおりです。

書類 ポイント
申立書 裁判所のホームページに書式と記載例がある
本人の戸籍謄本 発行から3か月以内
本人の住民票または戸籍附票 発行から3か月以内
後見人候補者の住民票または戸籍附票 発行から3か月以内
本人の診断書 発行から3か月以内。成年後見制度用の書式で医師に書いてもらう
本人情報シートの写し ケアマネジャーなど、本人の生活を支える福祉の担当者が作る
本人の健康状態の資料 介護保険認定書、療育手帳、障害者手帳などの写し
登記されていないことの証明書 本人がすでに後見などを受けていないことの証明。法務局で取る(発行から3か月以内)
本人の財産の資料 通帳の写し、残高証明書、不動産の登記事項証明書、ローンの資料など
本人の収支の資料 年金額の通知書、施設利用料・入院費の領収書、納税通知書など

マイナンバーが書かれた書類は出さないように注意します。

財産の資料の集め方は相続財産の調べ方が参考になります(名寄帳や残高証明書の取り方は同じです)。

申立てから後見が始まるまでの流れ

成年後見の申立てから開始までの流れ

  • STEP 1
    家庭裁判所に相談・書類をそろえる
    診断書を医師に、本人情報シートをケアマネジャーなどに依頼する
  • STEP 2
    申立て
    申立書と添付書類、収入印紙・郵便切手を家庭裁判所に出す
  • STEP 3
    面接・調査
    参与員や家庭裁判所調査官が、申立人・本人・後見人候補者から事情を聴く(ウェブ会議を使えることもある)
  • STEP 4
    鑑定(必要な場合)
    医師が本人の判断能力を鑑定する
  • STEP 5
    審判
    家庭裁判所が後見開始を決め、後見人を選ぶ
  • STEP 6
    登記・後見の開始
    審判が確定すると法務局に登記され、後見人が仕事を始める

令和7年の統計では、申立てから2か月以内に終わったものが約71.1%、4か月以内が約93.8%でした。

申立てをしたあとは、家庭裁判所の許可がないと取り下げられない点にも注意が必要です。

誰が後見人に選ばれるのか

成年後見人等に選ばれた人の内訳(令和7年)

申立書には後見人の候補者を書けますが、最終的に誰を選ぶかは家庭裁判所が決めます。

令和7年に選ばれた成年後見人などの内訳は、次のとおりです。

選ばれた人 件数
親族(配偶者・親・子・兄弟姉妹など) 7,014件(約16.4%)
司法書士 11,966件
弁護士 8,903件
社会福祉士 7,280件
市民後見人 390件

親族以外の専門職が選ばれるのは、全体の約83.6%です。

財産が多い、親族の間で意見が対立している、といった場合は、専門職が選ばれやすくなります。

専門職が選ばれると報酬がかかる

専門職の後見人には、本人の財産から報酬が支払われます。

報酬の額は家庭裁判所が決めます。本人が亡くなるまで続くことが多いため、長い期間で見ると大きな負担になります。

後見人になるとやること

  • 財産目録と収支予定表を作る:後見が始まったら、まず本人の財産と収支を調べて家庭裁判所に出す
  • 財産を管理する:本人の預金は本人のために使う。家族の生活費に流用してはいけない
  • 家庭裁判所に報告する:定期的に財産の状況などを報告する
  • 居住用の不動産を売るときは許可を取る:本人の自宅を売ったり貸したりするには、家庭裁判所の許可が必要

「後見人になれば、親の財産を家族のために自由に使える」わけではありません。

相続税対策の贈与や、値上がりを期待した投資なども、原則としてできなくなります。

任意後見の手続き

任意後見は、本人が元気なうちに、将来の後見人(任意後見受任者)と契約しておく制度です。

  • STEP 1
    任意後見契約を結ぶ
    公証役場で公正証書にする
  • STEP 2
    判断能力が落ちたら申し立てる
    家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てる
  • STEP 3
    任意後見が始まる
    任意後見監督人が選ばれると、契約で決めた内容の支援が始まる
任意後見監督人選任の申立て 内容
申立てができる人 本人、配偶者、4親等内の親族、任意後見受任者
申立先 本人の住所地の家庭裁判所
費用 収入印紙800円分+登記手数料1,400円分+郵便切手

本人以外が申し立てる場合は、本人の同意が必要です(本人が意思表示できないときを除く)。

任意後見は、令和7年の申立てが881件と、法定後見に比べてまだ少ない制度です。

家族信託という選択肢

親が元気なうちなら、成年後見のほかに「家族信託」で備える方法もあります。

家族信託は、親の財産の管理を子などに託す契約で、家庭裁判所の関与や専門職への継続的な報酬がありません。

ただし、判断能力が落ちてからでは契約できません。詳しくは家族信託とはで解説しています。

2026年6月に成立した成年後見制度の見直し

2026年に成立した成年後見制度の見直しのポイント

2026年6月17日、成年後見制度を見直す「民法等の一部を改正する法律」が成立し、6月24日に公布されました。

成年後見制度の見直しは、公布から2年6か月以内(2028年12月24日まで)の政令で定める日に施行されます。

いまの制度 改正後
後見・保佐・補助の3類型 後見・保佐を廃止し、補助に一本化。必要な行為ごとに代理権などを付ける
一度始めると、判断能力が回復しない限りやめられない 利用の必要がなくなったと家庭裁判所が認めれば終了できる
後見人の交代は、横領などの不正がないと難しい 本人の利益のため特に必要があるときは解任(交代)できる
選任のときの「本人の意見」は考慮要素の最後 本人の意見を考慮要素の冒頭に明記

たとえば「遺産分割のためだけに使い、終わったらやめる」といった使い方がしやすくなる見込みです。

ただし、施行されるまでは現在の制度(後見・保佐・補助)で手続きをします。

モデルケース:父の相続で、母が認知症の場合

たとえば、父が亡くなり、相続人が母と長男で、母が認知症と診断されている場合で考えます。

  • STEP 1
    遺産分割ができないことに気づく
    母は判断能力が不十分なので、そのままでは遺産分割協議に参加できない
  • STEP 2
    成年後見の申立てを準備する
    母のかかりつけ医に診断書、ケアマネジャーに本人情報シートを依頼する
  • STEP 3
    家庭裁判所に申し立てる
    長男が申立人になり、母の住所地の家庭裁判所に出す
  • STEP 4
    後見人が選ばれる
    専門職が選ばれることも多い。長男が後見人になった場合は、遺産分割のために特別代理人などが必要になる
  • STEP 5
    遺産分割協議をする
    後見人が母の代わりに協議に参加する。母の取り分は原則として法定相続分を確保する形になる

このケースでは、遺産分割が終わっても後見は続くのが現在の制度です。

2026年の改正法が施行されると、必要がなくなったときに終了できるようになります。

任意後見契約の結び方・費用・3つの型は任意後見とはで詳しく解説しています。

後見人が親の家を売るときの家庭裁判所の許可は認知症の親の家を売るには?で説明しています。

介護施設の種類と費用、費用を軽くする制度は介護施設の種類と費用で説明しています。

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よくある質問

親の預金を子が代わりに下ろすことはできませんか?

本人の判断能力が不十分になると、銀行は原則として家族による払い戻しに応じません。

医療費など本人のための支払いについて、銀行によっては相談に応じてもらえる場合もあるので、まずは取引先の銀行に相談しましょう。

後見人に自分を選んでもらえますか?

申立書に自分を候補者として書くことはできますが、選ぶのは家庭裁判所です。

候補者以外の人が選ばれても、そのことを理由に不服申立てはできません。

後見は途中でやめられますか?

現在の制度では、本人の判断能力が回復しない限り、原則として続きます。

2026年の改正法が施行されると、必要がなくなったときに終了できるようになります。

申立書類は誰に作成を頼めますか?

申立ては自分でできます。

書類の作成を依頼する場合、家庭裁判所に出す書類の作成は弁護士・司法書士の業務です。

申立ての費用は誰が払いますか?

申立ての費用(収入印紙、郵便切手、鑑定費用など)は、原則として申立人が負担します。

事情によっては、家庭裁判所に申し出て、本人の財産から払うことが認められる場合もあります。

父が亡くなり、母が認知症です。遺産分割はどうなりますか?

判断能力が不十分な相続人がいると、そのままでは遺産分割協議ができません。

後見人などが母の代わりに協議に参加します。

後見人は母の利益を守る立場なので、母の取り分を法定相続分より大きく減らすような分け方には、原則として同意できません。

後見人が子など同じ相続人の場合は、利益がぶつかるため、遺産分割のために特別代理人などが別に選ばれます。

後見人がつくと、本人は何もできなくなりますか?

日用品の買い物など、日常生活に関する行為は、本人が自分でできます。

後見人が取り消せるのは、それ以外の法律行為です。

後見人の仕事はいつまで続きますか?

現在の制度では、本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで続きます。

本人が亡くなると後見は終わり、後見人は財産を相続人に引き継ぎます。

遺産分割などが終わったからといって、途中でやめることは原則としてできません。

まとめ

  • 成年後見の申立先は本人の住所地の家庭裁判所。本人・配偶者・4親等内の親族などが申し立てられる
  • 費用は印紙800円+登記手数料2,600円+郵便切手。鑑定は約3.4%で、費用は約86%が10万円以下
  • 4か月以内に約94%が終わる。親族が後見人になるのは約16%
  • 後見人は本人のために財産を管理し、家庭裁判所に報告する。家族のための流用や相続税対策はできない
  • 2026年6月成立の改正法で、2028年12月までに補助へ一本化され、必要がなくなれば終了できるようになる

監修者

行政書士(2018年11月開業)・社会保険労務士試験合格。

遺産分割協議書の作成や相続人の調査(戸籍の収集)など、相続の書類づくりに携わっています。

このサイトでは、法務局・裁判所・国税庁・金融機関などが公表している一次資料で確かめた内容だけを書いています。

詳しくは運営者情報をご覧ください。

参考資料:裁判所「後見開始」「任意後見監督人選任」/最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況―令和7年1月~12月―」/法務省「民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」(2026年9月25日確認)

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