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任意後見とは?契約の結び方・費用・法定後見との違いと2026年改正のポイント

任意後見とは 相続税の基本
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「認知症になったら、財産の管理を誰に任せよう」と考えたとき、選択肢の一つが任意後見です。

任意後見は、元気なうちに、将来の後見人と任せる内容を自分で決めておく制度です。

ただし、契約しただけでは始まらず、監督人の報酬がかかるなど、知っておきたい点もあります。

この記事では、法務省・裁判所・日本公証人連合会の案内をもとに説明します。

任意後見の仕組み、契約の結び方、費用、始まるまでの流れ、2026年の法改正で変わる点を順に整理します。

先に結論
  • 任意後見は、本人が元気なうちに公正証書で契約しておく制度
  • 始まるのは、判断能力が落ちて家庭裁判所が任意後見監督人を選んだ時から
  • 公証役場の費用は手数料1万3,000円+印紙2,600円+登記嘱託手数料1,600円など
  • 任意後見人は家族でもなれるが、監督人は専門職が選ばれることが多く、報酬がかかる
  • 2026年6月公布の改正で、監督人を置かない運用などが可能になる(2028年12月までに施行)

この記事の監修:行政書士(2018年開業・社会保険労務士試験合格)。法務局・裁判所・国税庁などの一次資料で内容を確認しています。

任意後見とは

任意後見は、成年後見制度の一つです。

本人に十分な判断能力があるうちに、将来の後見人(任意後見受任者)と、任せる事務の内容を契約で決めておきます。

判断能力が不十分になったら、その人が本人に代わって、生活や療養看護、財産管理の事務を行います。

契約は、公証人が作る公正証書で結ぶ必要があります。

法定後見との違い

任意後見と法定後見の違い

法務省の案内をもとに、法定後見との違いを整理します。

項目 法定後見 任意後見
始める時期 判断能力が不十分になった後 元気なうちに契約し、判断能力が落ちたら開始
誰が後見人を決める 家庭裁判所 本人が契約で決める
権限 法律で決まる。契約の取消しができる場合がある 契約で決めた範囲の代理だけ。取消しはできない
手続き 家庭裁判所に開始の申立て 公正証書で契約→家庭裁判所に監督人選任の申立て
監督人 必要に応じて選任 全件で選任(現行法)

いちばんの違いは、誰に何を任せるかを本人が決められることです。

法定後見の手続きは成年後見の申立て手続きで説明しています。

利用はまだ少ない

最高裁判所の統計では、令和7年の任意後見監督人選任の申立ては881件でした。

成年後見関係事件の申立ては全体で43,159件なので、任意後見はその約2%です。

任意後見の3つの型

任意後見契約の3つの型

任意後見契約は、ほかの契約との組み合わせ方で、一般に3つの型に分けられます。

型 内容 向いている人
将来型 任意後見契約だけを結び、判断能力が落ちたら開始 今は自分で管理できる人
移行型 財産管理等の委任契約と任意後見契約を同時に結ぶ 体が不自由になったときから手伝ってほしい人
即効型 契約後すぐに監督人の選任を申し立てる 判断能力がすでに少し落ちている人

日本公証人連合会は、実務では「移行型」で結ぶことが多いと案内しています。

任意後見は判断能力が落ちてから始まるので、体が不自由なだけの段階には対応できないからです。

その間は、委任契約で財産管理などを頼むことになります。

任意後見契約の結び方

任意後見契約は、公証役場で公正証書にして結びます。

順番 やること
1. 受任者を決める 将来の任意後見人を誰にするか決める(家族でも専門職でもよい)
2. 内容を決める 任せる事務(代理権の範囲)と報酬の有無を決める
3. 公証役場に相談 書類をそろえ、公証人と文案を詰める
4. 契約 本人と受任者が公証役場で契約する(病気なら出張も可)
5. 登記 公証人が法務局に登記を嘱託する

任意後見契約は登記されるので、任意後見人は登記事項証明書で自分の権限を示せます。

必要な書類

日本公証人連合会の案内では、次の書類が必要です。

人 書類
本人 印鑑登録証明書+実印(または顔写真付きの公的身分証明書+認印か実印)、戸籍謄本または抄本、住民票
任意後見受任者 印鑑登録証明書+実印(または顔写真付きの公的身分証明書+認印か実印)、住民票

印鑑登録証明書は、発行から3か月以内のものに限られます。

受任者が法人の場合は、代表者の印鑑証明書と代表者印、資格証明書が必要です。

任せる内容(代理権目録)

任意後見人に任せる事務は、「代理権目録」に書きます。

  • 預貯金の管理・払戻し、年金の受け取り
  • 不動産の管理や売却
  • 介護サービスや施設入所の契約、医療費の支払い
  • 遺産分割の協議や相続の手続き
  • 役所の手続き

標準的な目録は範囲が広いので、必要に応じて範囲を絞ることもできます。

任意後見人が行うのは契約や支払いなどの法律行為で、介護そのものをする義務はありません。

任意後見にかかる費用

任意後見契約の公証役場の費用

契約するときの費用(公証役場)

項目 金額
公正証書作成手数料 1契約につき1万3,000円(3枚を超える分は1枚300円加算)
病床執務加算 公証人が出張する場合6,500円(ほかに日当・交通費)
法務局に納める収入印紙 2,600円
登記嘱託手数料 1,600円
正本・謄本の作成手数料 書面は枚数×300円、電磁的記録は1通2,500円
書留郵便料 登記のために謄本を法務局に送る費用

移行型で委任契約も結ぶと、委任契約の手数料が別にかかります。

受任者を複数にすると、原則として受任者の数だけ契約が増えます。

始めるときの費用(家庭裁判所)

項目 金額
申立手数料 収入印紙800円
登記手数料 収入印紙1,400円
郵便切手 裁判所ごとに違う
鑑定費用 鑑定が必要な場合のみ

始まってからの費用(報酬)

任意後見人の報酬は、本人と受任者の話し合いで決めます。

家族が任意後見人になる場合は、無報酬とする例も多いと公証人連合会は案内しています。

任意後見監督人の報酬は、家庭裁判所が本人の財産や事務の内容から決め、本人の財産から支払います。

報酬額の目安は、各家庭裁判所のウェブサイトで公開されています。

任意後見が始まるまでの流れ

任意後見が始まるまでの流れ

任意後見契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選んだ時から効力が生じます。

本人の判断能力が落ちたら、任意後見受任者などが、速やかに監督人の選任を申し立てます。

任意後見監督人選任の申立て

項目 内容
申立てができる人 本人、配偶者、4親等内の親族、任意後見受任者
申立先 本人の住所地の家庭裁判所
本人の同意 本人以外が申し立てる場合は必要(本人が意思表示できないときを除く)

裁判所の案内では、主に次の書類を添付します。

  • 本人の戸籍謄本
  • 任意後見契約公正証書の写し
  • 本人の成年後見等に関する登記事項証明書
  • 本人の診断書(家庭裁判所が定める様式)
  • 本人の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、通帳の写しなど)
  • 監督人の候補者がいれば、その住民票または戸籍附票

任意後見監督人の役割

任意後見監督人は、任意後見人が契約どおりに仕事をしているかを監督します。

任意後見人に財産目録などを出させ、家庭裁判所に報告します。

本人と任意後見人の利益がぶつかる行為では、監督人が本人を代理します。

法務省は、監督人には弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職や法人が選ばれることが多いと案内しています。

任意後見人の配偶者や直系血族、兄弟姉妹は監督人になれません。

任意後見でできないこと

できないこと 代わりの方法
本人がした不利な契約の取消し 法定後見(補助など)を使う
契約で決めていない事務 代理権目録に入れておく
亡くなった後の手続き(葬儀・遺品整理など) 死後事務委任契約を別に結ぶ
財産の積極的な運用や組み換え 家族信託を検討する
判断能力があるうちの財産管理 移行型で委任契約を結ぶ

任意後見は、本人の財産を守る制度です。

相続税対策のような運用や贈与には向きません。

任意後見契約の解除

任意後見契約は、始まる前と後で、やめ方が違います。

時期 解除の方法
監督人が選ばれる前 本人・受任者のどちらからでも、公証人の認証を受けた書面でいつでも解除できる
監督人が選ばれた後 正当な事由があり、家庭裁判所の許可を得た場合に限り解除できる

任意後見人に不正などがあれば、家庭裁判所が解任することもできます。

家族信託・法定後見との使い分け

やりたいこと 合う制度
将来の財産管理と、介護・施設の契約を信頼できる人に任せたい 任意後見
実家の売却やアパート経営など、財産の管理・処分を柔軟に任せたい 家族信託
すでに判断能力が不十分で、契約を結べない 法定後見
亡くなった後の財産の分け方を決めたい 遺言

任意後見と家族信託は、組み合わせて使うこともできます。

家族信託の仕組みは家族信託とはで説明しています。

遺言の作り方は公正証書遺言の必要書類と費用で説明しています。

2026年の法改正で変わること

2026年改正で変わる任意後見制度

2026年6月24日に公布された「民法等の一部を改正する法律」では、任意後見制度も見直されました。

法務省の概要資料によると、主な変更点は次のとおりです。

いまの制度 改正後
任意後見監督人は必ず選任 家庭裁判所が明らかに不要と認めれば、監督人を置かず裁判所が直接監督できる
法定後見を始めると任意後見契約は終了 補助を始めても、任意後見契約を続けられる
受任者が亡くなったときの次の人を決めておく仕組みがない 複数の受任者について、効力を生じさせる順序を合意できる
申立てができるのは親族と受任者だけ 本人が公正証書で指定した人も申し立てられる

成年後見制度の見直しは、公布から2年6か月以内(2028年12月24日まで)の政令で定める日に施行されます。

施行までは、今の制度で契約と手続きをします。

監督人の報酬が負担になるという指摘は、改正の理由の一つにも挙げられています。

希望を家族に伝えるにはエンディングノートも役立ちます。

認知症の親の家を売る方法の比較は認知症の親の家を売るには?で説明しています。

介護施設の種類と費用は介護施設の種類と費用で説明しています。

任意後見を含む終活全体の進め方は、終活でやることリスト(チェックリストWord無料)で確認できます。

亡くなったあとの葬儀や解約を頼む契約は死後事務委任契約とはで説明しています。

障害のある子のために親が備える方法は障害のある子の親なきあと対策(遺言・後見・信託・扶養共済)で説明しています。

よくある質問

家族を任意後見人にできますか?

できます。子や兄弟姉妹など、身内の人も任意後見人になれます。

適任者がいない場合は、弁護士・司法書士などの専門職や法人と契約することもできます。

認知症と診断されていても契約できますか?

契約の内容を理解できる判断能力が残っていれば、契約できる場合があります。

判断能力があるかは、公証人が本人と面談して確かめます。

判断能力がすでに不十分なら、法定後見を使います。

任意後見人は銀行で何を見せればよいですか?

任意後見が始まると、任意後見人と監督人が登記されます。

法務局で登記事項証明書を取り、金融機関などに提出します。

親が亡くなったら、任意後見はどうなりますか?

本人が亡くなると、任意後見契約は終了します。

その後の相続手続きは、相続人が行います。

手続きの全体は死亡後の手続き一覧と期限で確認できます。

まとめ

  • 任意後見は、元気なうちに将来の後見人と任せる内容を公正証書で決めておく制度
  • 家庭裁判所が任意後見監督人を選んだ時から始まる
  • 公証役場の費用は、手数料1万3,000円・印紙2,600円・登記嘱託手数料1,600円など
  • 監督人は専門職が多く、報酬は本人の財産から払う
  • 取消権がない・死後の手続きはできないなど、できないことは別の契約や制度で補う
  • 2026年の改正で、監督人を置かない運用や補助との併用が可能になる(2028年12月までに施行)

監修者

行政書士(2018年11月開業)・社会保険労務士試験合格。遺産分割協議書の作成や相続人の調査(戸籍の収集)など、相続の書類づくりに携わっています。

このサイトでは、法務局・裁判所・国税庁・金融機関などが公表している一次資料で確かめた内容だけを書いています。詳しくは運営者情報をご覧ください。

参考資料:法務省「成年後見制度・成年後見登記制度Q&A」(Q2・Q16〜Q19・Q22)、「民法等の一部を改正する法律の概要」(令和8年法律第45号)/裁判所「任意後見監督人選任」手続案内/日本公証人連合会「任意後見契約」Q&A(Q10・Q15・Q21・Q22)/最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和7年)」/任意後見契約に関する法律(2026年9月26日確認)

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