親が施設に入った、親が亡くなって実家が空き家になった。
そんなときに考えるのが「実家じまい」です。
実家じまいは、実家の家財を片付け、家を売る・貸す・取り壊すなど、実家の行き先を決めるまでの一連の作業のことです。
親が元気なうちに進めるか、亡くなった後に進めるかで、家を売る人も、使える税金の特例も変わります。
この記事では、実家じまいの順番と、それぞれのタイミングで気をつけることを、国税庁の資料や法律をもとに整理します。
時系列のチェックリストと、家財の仕分け表はWordで用意しました。
- 親が元気なうちなら、家を売るのは親本人。親の意思がはっきりしているうちに方針を決めておく
- 親が亡くなった後は、相続人が引き継いでから売る。相続放棄を考えているなら、片付けや売却の前に決める(民法921条1号)
- 税金の特例は、親が売る場合は「マイホームの3,000万円特例」(住まなくなってから3年目の年末まで)、相続後は「空き家の3,000万円特例」(2027年12月31日まで)と、別の制度になる
- 順番は、話し合い→重要書類の確認→家財の仕分けと片付け→家の行き先を決める→手続き
- 家財の処分を業者に頼むときは、市区町村の許可を持つ業者か確認する(環境省の注意喚起)
実家じまいとは
実家じまいは、親が住んでいた家について、家財の整理から家の処分までを進めることです。
法律上の用語ではありません。この記事では、次のような作業をまとめて実家じまいと呼びます。
- 家族で実家をどうするかを話し合う
- 重要な書類や財産を確認する
- 家財を仕分けて片付ける
- 家を売る・貸す・取り壊す・残すを決める
- 電気・ガス・水道や郵便などの手続きをする
親が元気なうちか、亡くなった後か

| 比べること | 親が元気なうちに進める | 親が亡くなった後に進める |
|---|---|---|
| 家を売る人 | 親本人 | 家を相続した相続人 |
| 事前に必要な手続き | 特になし(親の意思確認が大切) | 遺産分割・相続登記 |
| 使える税金の特例 | マイホームを売ったときの3,000万円特例(国税庁No.3302) | 空き家を売ったときの3,000万円特例(国税庁No.3306) |
| 注意点 | 親が認知症などで判断能力を失うと、親の家を売るのが難しくなる | 相続放棄を考えている人は、処分の前に決める |
親が元気なうちに進める場合
親が施設に入るなどして実家に住まなくなった場合、家を売るのは名義人である親本人です。
子が代わりに売りたくても、親の意思がなければ売ることはできません。
親が認知症などで判断能力を失うと、家庭裁判所が選ぶ成年後見人が必要になり、自宅を売るには家庭裁判所の許可が必要になります(民法859条の3)。
親の意思がはっきりしているうちに、実家をどうしたいかを話し合っておきましょう。
詳しくは認知症の親の家を売るには?や家族信託とは?で説明しています。
親が亡くなった後に進める場合
親が亡くなると、実家は相続人全員の共有になります。
遺産分割で誰が実家を引き継ぐかを決め、相続登記をしてから売ることになります。
相続登記は、相続で取得したことを知った日から3年以内に申請しなければなりません(不動産登記法76条の2)。
相続放棄を考えている人は、片付けの前に注意
相続財産を処分すると、相続を単純承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなることがあります(民法921条1号)。
価値のある家財の処分や家の売却は、放棄するかどうかを決めてから進めてください。
放棄の期限は、自分が相続人になったことを知った日から3か月です(民法915条1項)。
実家じまいの順番

| 順番 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 家族で話し合う | 親の希望、誰が窓口になるか、費用の分担 |
| 2 | 重要書類・財産を確認する | 権利証、通帳、保険証券、遺言書、年金の書類など |
| 3 | 家財を仕分ける | 残す・形見分け・売る・処分するに分ける |
| 4 | 片付けと処分 | 自分たちでやるか、業者に頼むかを決める |
| 5 | 家の行き先を決める | 売る・貸す・取り壊す・残す |
| 6 | ライフライン・郵便の手続き | 停止の時期は売却や解体の予定に合わせる |
| 7 | 税金の手続き | 売った翌年の確定申告、特例の確認 |
片付けは時間がかかるので、家を売る時期や特例の期限から逆算して始めましょう。
スケジュールの例(親が施設に入った場合)
| 時期 | やること |
|---|---|
| 入所が決まったら | 親の希望を確認・重要書類を探す・家財の仕分けを始める |
| 入所後〜数か月 | 片付け・査定・売り方を決める(売るのは親本人) |
| 住まなくなってから3年目の年末まで | マイホームの3,000万円特例を使うなら、この期限までに売る |
| 売った翌年 | 確定申告 |
スケジュールの例(親が亡くなった場合)
| 時期 | やること |
|---|---|
| 3か月以内 | 相続放棄をするか決める(民法915条1項)。それまで価値のある物の処分は控える |
| 4か月以内 | 亡くなった人の準確定申告(必要な場合) |
| 10か月以内 | 相続税の申告・納付(必要な場合) |
| 遺産分割の後 | 相続登記(取得を知った日から3年以内)・片付け・売却 |
| 相続から3年目の年末まで | 空き家の3,000万円特例を使うなら、この期限までに売る(特例自体は2027年12月31日まで) |
期限のある手続きは死亡後の手続き一覧と期限で確認できます。
重要書類の探し方
片付けの前に、次の書類を探しておきます。
- 権利証(登記済証)・登記識別情報通知
- 固定資産税の納税通知書・課税明細書
- 通帳・キャッシュカード・印鑑
- 生命保険の証券
- 遺言書(自筆の遺言書は開封せず、家庭裁判所で検認を受ける・民法1004条)
- 年金証書、健康保険証
- 家の購入時の売買契約書や領収書(売るときの税金の計算に使う)
- お墓の使用許可証
権利証が見つからない場合は権利証・登記識別情報をなくしたら、財産の調べ方は相続財産の調べ方で説明しています。
家財の仕分けと片付け

家財は、次の4つに分けると進めやすくなります。
| 分け方 | 例 | 行き先 |
|---|---|---|
| 残す | 写真、手紙、重要書類 | 引き継ぐ家族が保管 |
| 形見分け | 時計、着物、愛用品 | 親族で分ける(価値のある物は相続人全員の了解を得る) |
| 売る | 骨董品、美術品、貴金属、家電 | 買取業者などに査定を頼む |
| 処分する | 日用品、古い家具 | 市区町村のルールで出すか、許可のある業者に頼む |
骨董品や美術品は遺品の骨董品・美術品はどうする?、仏壇や位牌は実家の仏壇・位牌はどうする?で説明しています。
自分たちで片付ける場合のコツ
- 1部屋ずつ進め、終わった部屋は使わないようにする
- 捨てる前に、思い出の品や形見は写真に撮っておく
- 粗大ごみは市区町村に予約が必要なことが多いので、早めに日程を確認する
- 家電リサイクル法の対象品(エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機など)は、決まった方法で出す
- 重い家具や大量のごみは、無理をせず業者に見積もりを頼む
業者に頼むときの注意
家庭から出るごみを回収するには、市区町村の一般廃棄物処理業の許可などが必要です(廃棄物の処理及び清掃に関する法律7条)。
環境省は、許可を持たない業者に家庭の不用品の回収を頼まないよう注意を呼びかけています。
業者に頼む場合は、見積もりの内訳と、許可の有無を確認してから契約しましょう。
遺品整理の進め方と業者の選び方は遺品整理はいつから?で説明しています。
実家の片付け・解体の見積もり先
片付けや解体は業者によって費用に差が出るため、見積もりを比べてから頼みましょう。
| 相談先 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
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家の行き先を決める
| 方法 | 向いているケース | 詳しい記事 |
|---|---|---|
| 売る | 住む予定がなく、管理の負担をなくしたい | 相続した実家は売る?残す? |
| 取り壊して売る | 建物の傷みが大きい | 解体して売る?古家付きで売る? |
| 貸す | 建物の状態がよく、手放したくない | 空き家バンクとは? |
| 残す | 将来住む予定がある | 空き家の管理と管理不全空家 |
空き家のまま持ち続けると、固定資産税や管理の手間がかかり続けます。
管理が行き届かないと、市区町村から管理不全空家として指導や勧告を受けることもあります。
売る場合は、まず査定を取って、実家がいくらで売れそうかを確かめましょう(不動産の価格の調べ方)。
相続した不動産の売却・買取の相談先(比較)
特例の期限が迫っている場合や、ふつうの仲介では売りにくい不動産は、買取の査定もあわせて比べてみましょう。
| 相談先 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
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住める状態の家は仲介の査定、傷みが大きい家や権利関係が複雑な家は買取の査定も取り、両方の金額を比べてから売り方を決めましょう。
税金の特例は2つある
実家を売って利益が出ると、譲渡所得に所得税・住民税がかかります。
実家じまいでは、売る人と時期によって、使える特例が違います。
| 特例 | 売る人 | 主な期限・要件(国税庁の説明より) |
|---|---|---|
| マイホームを売ったときの3,000万円特例(No.3302) | 住んでいた親本人 | 住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る。取り壊した場合は、取り壊した日から1年以内に契約し、その間に貸駐車場などに使っていないこと など |
| 空き家を売ったときの3,000万円特例(No.3306) | 相続した相続人 | 昭和56年5月31日以前に建てた家で、一人で住んでいた親から相続したもの。耐震基準を満たすか取り壊して売る(買主による翌年2月15日までの改修・取り壊しも可)。相続から3年目の年末まで・2027年12月31日までの売却・売却代金1億円以下 など |
親が老人ホームなどに入所していた場合も、要介護認定を受けているなど一定の要件を満たせば、空き家の特例の対象になることがあります(国税庁No.3306)。
どちらの特例も要件が細かく、使えるかどうかで税額が大きく変わります。
売る前に、税務署か税理士に確認してください。
売ったときの税金の基本は相続した不動産を売ったときの税金で説明しています。
実家じまいでもめやすいこと
- 費用の負担:片付け・解体・管理の費用を誰がいつ立て替え、どう精算するか
- 形見分け:価値のある品を一部の親族だけで分けてしまう
- 売るか残すか:実家に思い入れがある家族と、手放したい家族の意見が分かれる
- 作業の分担:近くに住む家族に負担が集中する
話し合いで決めたことは、メモや遺産分割協議書に残しておくと、あとで説明しやすくなります。
相続人の間で話し合いがまとまらない場合は、弁護士に相談してください。
ライフラインと郵便の手続き
- 電気・ガス・水道:売却や解体の予定に合わせて停止する(片付けや内覧の間は使えるようにしておく)
- 固定電話・インターネット:解約や名義の変更
- 郵便:亡くなった人あての郵便の扱いを郵便局に相談する
- 火災保険:空き家にする場合は、保険会社に連絡して契約の内容を確認する
- 新聞・定期配送:止める
解体する場合は、ガスメーターの撤去などを事業者に頼む必要があります。
建物を取り壊したら、1か月以内に建物滅失登記を申請します(建物滅失登記のやり方)。
実家じまいのチェックリスト(Word・無料)
実家じまいを時系列で確認できるチェックリストと、家財の仕分け表をWordで用意しました。
無料ダウンロード
- 話し合いで決めること(親の希望・窓口・費用の分担)
- 重要書類のチェック欄
- 家財の仕分け表(残す・形見分け・売る・処分)
- 家の行き先と税金の特例の確認欄
- ライフライン・郵便・保険の手続き
よくある質問
実家じまいの費用は誰が払いますか?
法律で決まりはありません。
親が元気なうちは親が負担する家族もあれば、亡くなった後に売却代金から精算する方法もあります。
あとでもめないよう、立て替えた費用の記録と領収書を残しておきましょう。
遠方に住んでいて、実家に何度も行けません
重要書類の確認や仕分けなど、自分でやるべきことを先に済ませ、片付けや解体は業者に頼む方法があります。
鍵の受け渡しや立ち会いの回数を、見積もりの段階で業者と相談しておきましょう。
親が実家を手放したがりません
親の家は親の財産なので、親の意思が優先です。
無理に進めず、管理の負担や、将来の選択肢を一緒に確認するところから始めましょう。
希望はエンディングノートに書いてもらうと、家族で共有しやすくなります(エンディングノートの書き方)。
実家に兄弟が住んでいる場合は?
相続人の1人が住み続けたい場合は、その人が実家を取得し、ほかの相続人にお金を払う代償分割などの方法があります。
配偶者が住み続ける場合は、配偶者居住権という方法もあります(配偶者居住権とは?)。
実家じまいはいつから始めればいいですか?
決まった時期はありません。
親が元気なうちに話し合いと重要書類の確認だけでも済ませておくと、いざというときに慌てずに済みます。
売れない場合はどうすればいいですか?
買い手が見つからない場合は、買取業者に相談する、空き家バンクに登録する、といった方法があります。
土地を国に引き取ってもらう相続土地国庫帰属制度もありますが、建物がある土地は申請できないなどの要件があります(相続土地国庫帰属制度とは?)。
再建築できない土地などの手放し方は相続した訳あり不動産の手放し方で説明しています。
親が亡くなった後、すぐに片付けてもいいですか?
まず遺言書や重要書類を探し、相続人の間で片付けの進め方を決めてから始めましょう。
相続放棄を考えている相続人がいる場合は、価値のある物の処分は放棄するかどうかを決めた後にします。
形見分けや処分の記録を残しておくと、あとで相続人から聞かれたときに説明できます。
空き家にしている間は何をすればいいですか?
定期的に換気や通水をし、庭木や郵便物、外回りの傷みを確認します。
管理が行き届かないと、市区町村から指導を受けることもあるので、点検の記録を残しておきましょう(相続した空き家が「管理不全空家」「特定空家」に?)。
まとめ
まずは家族で話し合い、重要書類を探すところから始めてください。
時系列のチェックリストを家族で共有し、誰が何をいつまでにやるかを書き込んでおくと、進み具合が分かりやすくなります。
参考にした資料
- 国税庁タックスアンサーNo.3302(マイホームを売ったときの特例)、No.3306(被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)
- 民法859条の3・915条・921条・1004条、不動産登記法76条の2、廃棄物の処理及び清掃に関する法律7条
- 環境省「不用品回収業者に関する調査結果」(許可のない業者への注意)
