亡くなった家族の名義の車は、そのままでは売ることも、廃車にすることもできません。
相続人が名義を変える手続き(移転登録)が必要です。
車の相続手続きは、普通自動車は運輸支局、軽自動車は軽自動車検査協会と、窓口も必要書類も違います。
この記事では、国土交通省(関東運輸局)と軽自動車検査協会の案内に沿って説明します。
扱うのは、車の相続に必要な書類、100万円以下の車の簡単な手続き、売却や廃車にする場合の流れです。
- まず車検証の「所有者」を確認する。ローン会社などが所有者なら、相続は発生しない
- 普通自動車は運輸支局で手続き。手数料は700円(自動車検査登録印紙)
- 車の価格が100万円以下なら、「遺産分割協議成立申立書」で簡単に手続きできる
- 軽自動車は軽自動車検査協会で手続き。戸籍謄本等(コピー可)で名義を変えられ、申請手数料は無料
最初に確認すること:車検証の所有者

関東運輸局の案内では、自動車の所有者の名義は、車検証の「所有者の氏名又は名称」で確認するよう書かれています。
| 車検証の所有者 | 相続 |
|---|---|
| 亡くなった方 | 相続が発生する。相続人への名義変更が必要 |
| ローン会社・販売店など第三者 | 相続は発生しない。ローンの残りや名義の扱いを、ローン会社などに確認する |
2023年1月から車検証が電子化され、紙の車検証には所有者などの一部の情報が記載されなくなっています。
その場合は、車検証と一緒に交付される「自動車検査証記録事項」で確認します。
誰が相続人になるか
関東運輸局の案内でも、民法の順位が紹介されています。
| 順位 | 相続人 |
|---|---|
| 常に | 配偶者 |
| 第1順位 | 子(亡くなっていれば孫など) |
| 第2順位 | 父母(亡くなっていれば祖父母) |
| 第3順位 | 兄弟姉妹(亡くなっていれば甥・姪) |
詳しくは法定相続人の範囲と順位で解説しています。
車をどうするかで手続きが変わる
関東運輸局の案内では、相続の手続きとして次のパターンが紹介されています。
| 手続き | こんなときに |
|---|---|
| 単独相続 | 相続人のうち1人が車を相続する |
| 共同相続 | 相続人全員の共有として相続する |
| 第三者への名義変更 | 相続と同時に、買取業者などに売る |
| 一時抹消登録 | 相続と同時に、いったん使用をやめる(ナンバーを返す) |
| 永久抹消登録 | 車を解体して廃車にする(相続人が代理で申請) |
もっとも多いのは、相続人の1人が車を引き継ぐ「単独相続」です。
共同相続にすると、売るときなどに共有者全員の書類が必要になるため、1人の名義にするのが一般的です。
普通自動車の単独相続の必要書類
関東運輸局の案内による、相続人のうち1人が相続する場合の書類は次のとおりです。
| 書類 | ポイント |
|---|---|
| 申請書(OCRシート第1号様式) | 運輸支局などの窓口で配布。印刷して使うこともできる |
| 手数料納付書 | 自動車検査登録印紙700円を貼る |
| 自動車検査証(車検証) | 有効期間内のもの |
| 戸籍謄本、または法定相続情報証明書(一覧図の写し) | 亡くなった事実と相続人全員が確認できるもの。改製原戸籍が必要な場合もある |
| 遺産分割協議書など(下の表のいずれか) | 相続人が1人だけの場合は不要 |
| 印鑑証明書 | 相続する人のもの。発行から3か月以内 |
| 実印(または委任状) | 相続する人のもの |
| 車庫証明書(自動車保管場所証明書) | 証明日から40日以内。車検証の使用の本拠の位置と新しい使用者の住所が同じなら不要 |
| 使用者の住民票 | 相続する人と使用者が違う場合。発行から3か月以内 |
「遺産分割協議書など」は次のいずれか
| 書類 | ポイント |
|---|---|
| 遺産分割協議書 | 相続人全員が実印を押したもの。未成年者がいる場合は特別代理人の押印が必要 |
| 遺産分割協議成立申立書 | 車の価格が100万円以下と確認できる査定証などを付けた場合に使える |
| 遺言書 | 公正証書遺言以外は、家庭裁判所の検認済みのもの |
| 遺言書情報証明書 | 法務局の遺言書保管制度を使っていた場合 |
| 遺産分割の調停調書・審判書・判決謄本 | 家庭裁判所などで決まった場合(審判書・判決は確定証明書付き) |
100万円以下の車なら「遺産分割協議成立申立書」が使える

車の価格が100万円以下なら、手続きが簡単になります。
査定証や査定価格がわかる資料の写しで100万円以下と確認できる場合は、遺産分割協議書の代わりに「遺産分割協議成立申立書」を使えます。
関東運輸局の案内では、この場合、相続する人が相続人であることが確認できれば、ほかの相続人の確認は不要とされています。
| 遺産分割協議書 | 遺産分割協議成立申立書 | |
|---|---|---|
| 使える車 | 価格に関係なく使える | 価格が100万円以下の車(査定証などが必要) |
| 署名・押印 | 相続人全員の実印 | 相続する人だけ |
| 印鑑証明書 | 相続する人のもの | 相続する人のもの |
年式の古い車などは100万円以下になることが多いので、この方法を使うと、ほかの相続人に署名・押印を頼まずに済みます。
査定は、買取業者やディーラーなどに依頼します。
遺産分割協議書に車を書く場合
車以外の財産とまとめて遺産分割協議書を作る場合は、車を次のように特定して書きます。
相続人〇〇〇〇は、次の自動車を取得する。
自動車登録番号 〇〇〇〇〇〇〇〇
車台番号 〇〇〇〇〇〇〇〇
関東運輸局の案内では、車以外の財産を含む協議書の場合、原本と写しを持参すれば、原本を確認したあとに返してもらえます。
協議書の作り方は遺産分割協議書の書き方|Word雛形4パターンで解説しています。
手続きの流れ(普通自動車)
-
STEP 1車検証で所有者を確認する
-
STEP 2誰が相続するかを決める遺産分割協議、または遺言の内容を確認
-
STEP 3書類をそろえる戸籍(または一覧図の写し)、協議書または申立書、印鑑証明書、車庫証明書など
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STEP 4運輸支局で申請する自動車の使用の本拠の位置を管轄する運輸支局または自動車検査登録事務所に行く
-
STEP 5新しい車検証を受け取る管轄が変わる場合は、ナンバープレートの交換のため車両を持ち込む
手続きが複雑なので、わからない場合は車検証を用意して、管轄の運輸支局などに事前に相談するよう、関東運輸局も案内しています。
軽自動車の相続手続き

軽自動車は、運輸支局ではなく、軽自動車検査協会の事務所で手続きします。
軽自動車検査協会の案内では、相続の場合、次のいずれかの書面が必要とされています。
- 戸籍謄本等(亡くなった事実と、新しい所有者が相続人であることが確認できるもの)
- 法務局が交付する法定相続情報一覧図
いずれもコピーでよく、複数ページのものは全ページ分が必要です。死亡診断書は原則として使えません。
| 項目 | 軽自動車(軽自動車検査協会の案内) |
|---|---|
| 車検証 | 原本が必要(コピー不可) |
| 使用者の住所を証する書面 | 使用者や住所が変わる場合に、住民票の写しか印鑑(登録)証明書(発行から3か月以内) |
| ナンバープレート | 管轄が変わる場合に必要 |
| 申請手数料 | 自動車検査証記録事項の変更は無料 |
普通自動車と比べると、遺産分割協議書や相続人全員の印鑑証明書が不要なぶん、手続きはかなり簡単です。
相続した車を売る・廃車にする場合
売る場合
関東運輸局の案内では、相続と第三者への名義変更を同時に手続きする方法も紹介されています。
買取業者に売る場合は、業者が手続きを代行してくれることが多いので、必要書類を業者に確認しましょう。
車を売るときは、買取業者の査定額を比べてから決めましょう。
相続放棄を考えている人は、車を売る前に放棄するかどうかを決めてください(相続財産を処分すると、民法921条1号により単純承認とみなされることがあります)。
廃車にする場合
使う予定がない場合は、「一時抹消登録」(いったん使用をやめる)か、「永久抹消登録」(解体して廃車にする)をします。
抹消登録をすると、自動車税(種別割)の月割りの還付を受けられる場合があります。
車検が切れている場合
車検証の有効期間が過ぎている場合の進め方も、関東運輸局が案内しています。
それによると、すぐに使うなら車検を受けてから相続の手続きを、すぐに使わないなら一時抹消登録をしてから、使うときに登録し直すよう案内されています。
車の相続で注意したいこと
- 自動車保険:亡くなった方が契約者の保険は、相続する人への名義変更や解約が必要。等級を引き継げる場合もあるので、保険会社に確認する
- 自動車税:毎年4月1日時点の所有者に課税される。名義変更が遅れると、相続人に通知が届く
- ローンの残り:亡くなった方名義のローンが残っている場合は、ローン会社に連絡する
- 相続放棄をした人がいる場合:家庭裁判所の相続放棄申述受理証明書の原本と写しが必要
- 相続人に未成年者がいる場合:利益相反になるときは、家庭裁判所で特別代理人を選んでもらう
共同相続(相続人全員の共有にする)の必要書類
関東運輸局の案内では、相続人全員の共有として相続する場合、単独相続と比べて次の点が違います。
| 書類 | 共同相続の場合 |
|---|---|
| 申請書 | OCRシート第1号様式に加えて第9号様式 |
| 印鑑証明書 | 相続人全員の分(発行から3か月以内) |
| 実印 | 相続人全員の実印、または全員の実印を押した委任状 |
| 遺産分割協議書 | 不要(共有にするため) |
共有にすると、あとで売ったり廃車にしたりするときに、また共有者全員の書類が必要になります。
車は分けられない財産なので、特別な理由がなければ、誰か1人の名義にしておくほうが手間が少なくなります。
遺産分割協議成立申立書の書き方
遺産分割協議成立申立書は、運輸支局の窓口で配布されているほか、運輸局のホームページから様式を入手できます。
主に次の内容を書きます。
- 亡くなった方(被相続人)の氏名と死亡日
- 相続する車の登録番号と車台番号
- 遺産分割協議が成立し、申立人がその車を相続したこと
- 申立人(車を相続する人)の住所・氏名と実印
あわせて、車の価格が100万円以下であることがわかる査定証などの写しを付けます。
実際の様式と書き方は、手続きする運輸支局の案内を確認してください。
車庫証明(自動車保管場所証明書)の取り方
車を相続した人の住所が、車検証の「使用の本拠の位置」と違う場合は、新しい保管場所の車庫証明が必要です。
- 車を保管する場所を管轄する警察署で、申請書類を受け取る
- 保管場所の所在図・配置図、保管場所使用権原疎明書面(自分の土地なら自認書、借りている駐車場なら使用承諾証明書など)を用意する
- 警察署に申請し、手数料を納める
- 証明書と標章を受け取る
関東運輸局の案内では、車庫証明書は証明日から40日以内のものが必要です。
地域によっては車庫証明が不要な場所もあるので、警察署に確認しましょう。
管轄が変わるとナンバープレートも変わる
車を相続した人の住所が、今のナンバーの管轄と違う地域にある場合は、ナンバープレートの変更が必要です。
この場合は、車を運輸支局に持ち込み、古いナンバーを返して新しいナンバーを付けます。
ナンバープレート代が別にかかります。遠方の車を相続した場合は、手続きの前に管轄の運輸支局を確認しておきましょう。
相続した車の自動車保険
自動車保険の契約者や記名被保険者が亡くなった場合は、保険会社に連絡して、名義の変更か解約の手続きをします。
同居の親族が車を引き継ぐ場合などは、保険の等級を引き継げることがあります。
名義変更をしないまま運転していると、事故のときに補償を受けられないおそれもあるので、早めに保険会社に確認しましょう。
相続した車を手続きする前のチェックリスト

- 車検証(または自動車検査証記録事項)で所有者を確認した
- 車検の有効期間が残っているか確認した
- 誰が車を引き継ぐかを決めた(使う・売る・廃車にする)
- 車の価格を査定してもらった(100万円以下なら申立書が使える)
- 戸籍謄本または法定相続情報一覧図の写しを用意した
- 引き継ぐ人の印鑑証明書(3か月以内)と実印を用意した
- 住所が変わる場合は車庫証明を取った
- 自動車保険の名義変更を保険会社に相談した
このリストがそろってから運輸支局に行けば、1回の来庁で手続きを終えやすくなります。
モデルケース:父の車を長男が引き継ぐ場合
たとえば、父名義の普通自動車(査定額80万円)を、長男が引き継いで乗り続ける場合で考えます。
-
STEP 1車検証で所有者を確認する所有者が父本人か、ローン会社かを確かめる
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STEP 2査定額を確認する査定額が100万円以下なので、遺産分割協議書の代わりに「遺産分割協議成立申立書」を使える
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STEP 3書類をそろえる戸籍、申立書、長男の印鑑証明書、車庫証明(住所が変わる場合)など
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STEP 4運輸支局で移転登録をする手数料を納め、新しい車検証を受け取る
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STEP 5自動車保険を切り替える保険会社に連絡し、名義や運転者の条件を見直す
車を使わず売る場合も、いったん相続人の名義に変えるか、相続手続きに対応している買取業者に相談します。
よくある質問
車の相続手続きに期限はありますか?
法律上の具体的な期限は定められていませんが、名義が亡くなった方のままでは、売却や廃車ができません。
自動車税の通知や保険の手続きもあるので、早めに名義を変えておきましょう。
車の価格はどうやって調べればいいですか?
買取業者やディーラーに査定を依頼し、査定証を出してもらいます。
100万円以下と確認できれば、遺産分割協議成立申立書を使えます。
手続きを自分でするのが大変です
運輸支局での手続きは、行政書士に依頼することもできます。
売却するなら、買取業者に書類の準備から任せる方法もあります。
相続税がかかる場合、車はいくらと評価しますか?
車も相続財産なので、相続税がかかる家庭では、亡くなった日の時価(同じような車の売買価格など)で評価します。
相続税の仕組みは相続税はいくらからかかる?で解説しています。
相続人が1人だけの場合、遺産分割協議書は要りますか?
関東運輸局の案内では、相続人が1人のみの場合は、遺産分割協議書などは不要とされています。
車検証をなくしてしまいました
相続の手続きには有効期間内の車検証が必要です。
なくした場合は、運輸支局で再交付の手続きが必要になるので、手続きする運輸支局に相談しましょう。
亡くなった方の車を、相続人がそのまま運転してもいいですか?
名義変更の前でも、運転そのものがすぐに禁止されるわけではありませんが、自動車保険の補償を受けられないおそれがあります。
運転する前に、保険会社に連絡して名義や補償の扱いを確認しましょう。
車の相続手続きは代理人に頼めますか?
頼めます。関東運輸局の案内でも、相続人の実印の代わりに、実印を押した委任状を使えるとされています。
運輸支局での登録手続きは、行政書士などに依頼することもできます。
バイク(二輪車)の相続はどうなりますか?
250ccを超えるバイクは運輸支局、126〜250ccのバイクも運輸支局で届出の手続きをします。
125cc以下の原付は、市区町村の窓口で手続きします。
必要書類はそれぞれの窓口で確認しましょう。
亡くなった方の車を売ったお金は、誰のものになりますか?
車を相続した人が売った場合、売った代金はその相続人のものです。
ほかの相続人と代金を分ける約束をしている場合は、遺産分割協議書にその内容を書いておくと、後でもめにくくなります。
車の相続で遺産分割協議書を作るのは面倒です
車の価格が100万円以下なら、遺産分割協議成立申立書で、ほかの相続人の署名・押印なしに手続きできます。
ほかに不動産や預金もあり、どうせ遺産分割協議書を作るなら、車も一緒に書いておくと、1つの協議書で済みます。
相続人が遠方に住んでいて、運輸支局に行けません
委任状があれば、ほかの人に手続きを頼めます。
車を引き継ぐ人の近くの運輸支局で手続きする場合は、管轄が変わるため、ナンバープレートの変更のために車両を持ち込む必要があります。
車の相続手続きに行く前に、運輸支局に相談できますか?
関東運輸局の案内でも、相続の手続きは非常に複雑なので、不明な点があれば車検証などを手元に用意して、事前に管轄の運輸支局などに相談するよう書かれています。
書類がそろっているか心配な場合は、行く前に電話で確認しておくと安心です。
相続した車を家族で使い続ける場合、名義は誰にすればいいですか?
主に運転する人の名義にするのが一般的です。
車を使う人(使用者)と持ち主(所有者)を別の人にすることもできますが、その場合は使用者の住民票などが別に必要になります。
車の相続手続きは平日しかできませんか?
運輸支局や軽自動車検査協会の窓口は、原則として平日に開いています。
仕事で行けない場合は、委任状を使って家族や専門家に頼む方法があります。
まとめ
監修者
行政書士(2018年11月開業)・社会保険労務士試験合格。遺産分割協議書の作成や相続人の調査(戸籍の収集)など、相続の書類づくりに携わっています。
このサイトでは、法務局・裁判所・国税庁・金融機関などが公表している一次資料で確かめた内容だけを書いています。詳しくは運営者情報をご覧ください。
参考資料:国土交通省 関東運輸局「自動車の相続による手続き」「単独相続(相続人のうち一人が相続する場合)」/軽自動車検査協会「名義変更(売買・譲渡・その他)」(2026年9月確認)

