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相続放棄とは?3か月の期限・費用・やってはいけないことをわかりやすく解説

相続放棄とは?3か月の期限・費用・やってはいけないことをわかりやすく解説 相続手続き
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相続放棄とは、亡くなった方の財産も借金も、どちらも受け継がないと決めることです。

「借金のほうが多そう」「関わりたくない」というときに選ばれます。

ただし、相続放棄には3か月という短い期限があり、一度認められると取り消せません。

この記事では、相続放棄の仕組みと、選ぶ前に知っておきたい注意点を、裁判所の案内に沿ってわかりやすく説明します。

先に結論
  • 相続放棄は家庭裁判所に申し出る必要がある。家族に「いらない」と言うだけでは放棄にならない
  • 期限は、相続が始まったことを知った日から3か月以内
  • 財産を使ったり処分したりすると、放棄できなくなることがある
  • 放棄すると、次の順位の親族に相続が移る

この記事の監修:行政書士(2018年開業・社会保険労務士試験合格)。法務局・裁判所・国税庁などの一次資料で内容を確認しています。

相続の3つの選び方

相続の3つの選び方(単純承認・相続放棄・限定承認)

相続人は、次の3つから選びます。何もしないまま3か月が過ぎると、1つ目の「単純承認」をしたことになります。

選び方 どうなるか 向いているケース
単純承認 財産も借金もすべて受け継ぐ 財産のほうが多いことがはっきりしている
相続放棄 財産も借金も受け継がない 借金のほうが明らかに多い
限定承認 受け継いだ財産の範囲でだけ借金を払う 借金がどれだけあるかわからず、財産が残るかもしれない

限定承認は、相続人全員がそろって申し出る必要があり、手続きも複雑なため、実際に選ばれることは多くありません。

相続放棄の手続き(裁判所の案内より)

相続放棄の期限・費用・申述先

項目 内容
申し出る人 相続人本人(未成年者などは法定代理人が代わりに申し出る)
期限 自分のために相続が始まったことを知ったときから3か月以内
申し出る先 亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所
費用 収入印紙800円分(申し出る人1人につき)と、連絡用の郵便切手(金額は裁判所ごとに違う)

申し出ると、家庭裁判所から確認の書類(照会書)が届くことがあります。

回答して認められると、「相続放棄申述受理通知書」が届きます。

申述書の書き方や必要書類は、裁判所のホームページに書式と記載例が載っています。

家庭裁判所に出す書類の作成を人に頼む場合、依頼先は弁護士か司法書士です。

3か月で決められないときは

財産や借金の調査に時間がかかる場合は、3か月が過ぎる前に家庭裁判所に申し出れば、期間を延ばしてもらえることがあります(熟慮期間の伸長)。

期限ぎりぎりで慌てないよう、早めに調べ始めることが大切です。

相続放棄の前にやってはいけないこと

相続放棄の前にやってはいけないこと

亡くなった方の財産を「自分のもの」として扱うと、相続を受け入れた(単純承認した)とみなされ、放棄できなくなることがあります。

注意が必要な行動 理由
預金を引き出して自分のために使う 財産を処分したとみなされるおそれがある
不動産や車を売る・名義を変える 同上
亡くなった方の借金を相続財産から払う 財産を処分したとみなされるおそれがある
形見分けで高価な物をもらう 価値によっては処分とみなされるおそれがある

どこまでが許されるかは状況によって判断が分かれます。放棄を考えているなら、財産には手をつけないのが一番安全です。

放棄すると、相続は次の人に移る

相続放棄をすると相続は次の順位に移る

相続放棄をした人は、初めから相続人でなかったことになります。

すると、同じ順位の相続人がいなくなった場合、次の順位の親族が相続人になります。

放棄した人 次に相続人になる人
子全員 亡くなった方の父母(いなければ祖父母)
父母・祖父母全員 亡くなった方の兄弟姉妹(亡くなっていれば甥・姪)

たとえば、借金を理由に子全員が放棄すると、今度は亡くなった方の親や兄弟姉妹が借金を受け継ぐ立場になります。

放棄するときは、次の順位になる親族にも知らせておくと、後でトラブルになりにくくなります。

なお、子が放棄しても、その子(孫)が代わりに相続人になることはありません。

順位の考え方は法定相続人の範囲と順位で図にしています。

放棄しても受け取れるもの

次のものは、相続放棄をしても受け取れる場合があります。

  • 生命保険金:受取人として指定されていれば、受取人自身のお金として受け取れる
  • 遺族年金:遺族として受け取る年金で、相続財産ではない

ただし、生命保険金を受け取った場合の税金の扱いは別に考える必要があります。

放棄したあとの手続き

  • 債権者への連絡:借金の督促が来たら、相続放棄申述受理通知書のコピーを送る。正式な証明が必要なら、家庭裁判所で「相続放棄申述受理証明書」を取る
  • ほかの相続人の手続き:銀行や法務局の手続きで、放棄した人がいることを示すために受理証明書を求められることがある
  • 遺産分割協議:放棄した人は加わらない

相続放棄に必要な書類

裁判所の案内によると、相続放棄の申述には、申述書と次の書類が必要です。

誰が放棄するかによって、そろえる戸籍が変わります。

全員に共通

  • 相続放棄の申述書(裁判所のホームページに書式と記載例がある)
  • 亡くなった方の住民票の除票または戸籍の附票
  • 放棄する人の戸籍謄本

放棄する人ごとに追加で必要な戸籍

放棄する人 追加で必要な戸籍
配偶者 亡くなった方の死亡の記載がある戸籍
子・孫(第1順位) 亡くなった方の死亡の記載がある戸籍。孫が代わりに相続人になっている場合は、本来の相続人(子)の死亡の記載がある戸籍も
父母・祖父母(第2順位) 亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍。子で亡くなっている人がいれば、その人の出生から死亡までの戸籍なども
兄弟姉妹・甥・姪(第3順位) 亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍。子や親で亡くなっている人の戸籍なども

同じ書類は1通で足ります。

先に放棄した人がすでに出している戸籍は、出し直さなくてよいとされています。

戸籍の代わりに法定相続情報一覧図の写しを出せる場合もあるので、申し出る家庭裁判所に確認しましょう。

相続放棄の流れ

  • STEP 1
    財産と借金を調べる
    通帳・郵便物・借入の契約書などで確認する
  • STEP 2
    放棄するか決める
    3か月以内に決められないなら期間の延長を申し立てる
  • STEP 3
    書類を集めて申述書を書く
  • STEP 4
    家庭裁判所に出す
    亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所。郵送でも出せる
  • STEP 5
    照会書に答える
    家庭裁判所から質問が届いたら、書いて返送する
  • STEP 6
    受理通知書が届く
    これで放棄が認められたことになる

借金の調べ方

放棄するかどうかを決めるには、借金がどれだけあるかを知る必要があります。

次のような方法で調べられます。

調べ方 わかること
郵便物・メールを確認する カード会社や消費者金融からの請求書、督促状
通帳の出入金を確認する 毎月の返済の引き落とし
信用情報機関に開示を請求する クレジットカード・ローン・消費者金融の契約や残高(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター)
不動産の登記事項証明書を取る 住宅ローンなどの担保(抵当権)がついているか

信用情報機関への開示請求は、相続人が亡くなった方の分を請求できます。

手続き方法や必要書類は、各機関のホームページで確認できます。

放棄しても空き家の管理が残ることがある

相続放棄をしても、管理の責任が残る場合があります。

放棄した時点でその財産を実際に管理・占有していた場合は、次の相続人や相続財産清算人に引き渡すまで、その財産を保存しなければなりません(2023年4月1日施行の改正民法)。

たとえば、亡くなった親と同居していた家を放棄した場合、すぐに放っておいてよいわけではありません。

逆に、遠方に住んでいて実家を管理していなかった人は、この義務を負わないのが原則です。

注意:相続財産を売ると、相続を承認したものとみなされ、あとから相続放棄はできなくなります(民法921条1号)。

買取の査定は、放棄しないと決めてから、売り方を比べるために使ってください。

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「相続放棄」と「何ももらわない」の違い

よく混同されるのが、家庭裁判所での相続放棄と、遺産分割協議で「何も受け取らない」と決めることです。

見た目は同じ「財産を受け取らない」でも、借金の扱いがまったく違います。

相続放棄 遺産分割で何ももらわない
手続き 家庭裁判所に申し出る 相続人全員で協議書を作る
期限 知った日から3か月以内 なし
借金 受け継がない 債権者(お金を貸した側)には、法定相続分に応じた支払いを求められることがある
相続人の地位 初めから相続人でなかったことになる 相続人のまま
次の順位への影響 次の順位の親族が相続人になることがある 影響なし

家族の中で「借金は長男が払う」と決めても、お金を貸した側はその取り決めに縛られません。

借金を確実に受け継がないためには、相続放棄が必要です。

申述書で書く内容

相続放棄の申述書は、裁判所のホームページに書式と記載例があります。

主に次の内容を書きます。

  • 申述する人(放棄する人)の住所・氏名・生年月日・亡くなった方との関係
  • 亡くなった方の本籍・最後の住所・氏名・死亡日
  • 相続が始まったことを知った日
  • 放棄の理由(借金が多い、生活が安定している、遺産が少ないなど、選択肢から選ぶ)
  • わかっている範囲の財産と借金の概略

「相続が始まったことを知った日」は、3か月の期限の起点になる大事な項目です。

亡くなった日と違う場合(亡くなったことを後で知った場合など)は、その事情がわかるように書きます。

相続放棄にかかる費用の目安

費用 目安
収入印紙 放棄する人1人につき800円
郵便切手 申し出る家庭裁判所ごとに違う
戸籍謄本 1通450円
除籍謄本・改製原戸籍 1通750円
住民票の除票・戸籍の附票 1通数百円(市区町村によって違う)

親や兄弟姉妹が放棄する場合は、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍が必要になるため、戸籍の費用が増えやすくなります。

借金があるかどうかの調べ方は相続財産の調べ方で解説しています。

モデルケースで考える:放棄するか、しないか

ケース1:借金が明らかに多い

たとえば、父の預金が50万円、消費者金融などからの借入れが500万円あるとわかった場合です。

プラスの財産よりマイナスの財産が明らかに多いので、相続放棄を検討します。

父の子全員が放棄すると、次の順位の父の親や兄弟姉妹が相続人になるので、放棄したことを親族にも伝えておきます。

ケース2:借金があるかどうかわからない

父が自営業で、取引先への支払いや保証債務があるかもしれない、という場合です。

3か月以内に調べきれないときは、家庭裁判所に期限の延長(熟慮期間の伸長)を申し立て、その間に信用情報の開示や郵便物の確認を進めます。

ケース3:実家は欲しくないが、預金は欲しい

相続放棄は、一部の財産だけを放棄することはできません。

実家だけを手放したい場合は、放棄ではなく、遺産分割協議でほかの相続人が実家を取得する、売却して代金を分ける、などの方法を考えます。

相続放棄をしても死亡保険金を受け取れるか、税金はどうなるかは死亡保険金と相続税で解説しています。

申述書の欄ごとの書き方と、立場ごとに必要な戸籍は相続放棄申述書の書き方と必要書類で解説しています。

この記事の監修:行政書士(2018年開業・社会保険労務士試験合格)。法務局・裁判所・国税庁などの一次資料で内容を確認しています。

相続放棄が認められない主なケース

相続放棄の申述をしても、家庭裁判所に受理されない場合があります。

主なケースは次のとおりです。

ケース 理由
3か月の期限を過ぎた 相続の開始を知った時から3か月以内に申述が必要(民法915条)
相続財産を処分した 預金を引き出して使う、不動産を売るなどは単純承認とみなされる(民法921条1号)
財産を隠した・勝手に使った 放棄の後でも、隠したり使ったりすると単純承認とみなされる(民法921条3号)
書類の不備・照会への未回答 裁判所からの照会書に答えないと、判断できない
本人の意思ではない 家族が本人に無断で申述しても認められない

3か月を過ぎていても認められることがある

裁判所の案内では、相続財産がまったくないと信じ、そう信じたことに相当な理由がある場合に触れています。

その場合は、財産の存在を知った時から3か月以内に申述すれば、受理されることもあります。

たとえば、何年もたってから借金の督促状が届いて、初めて借金を知ったようなケースです。

この場合は、借金を知った日や、それまで知らなかった事情を申述書に具体的に書きます。

「処分」に当たる行為・当たらない行為

処分に当たりやすい 一般に処分に当たらない
預金を引き出して自分のために使う 財産の現状を保つための行為(保存行為)
不動産や車を売る・名義を変える 財産の内容を調べる
遺産分割協議に参加して財産を受け取る 死亡保険金を受取人として受け取る
価値のある遺品を持ち帰る・売る 経済的価値のない写真・手紙などの形見

判断に迷う行為は、放棄の手続きが終わるまで控えましょう。

受理されなかったとき

申述を却下する審判に不服がある場合は、即時抗告という不服申立てができます。

期間は、審判の告知を受けた日から2週間以内です。

期限や事情に不安があるときは、申述の前に弁護士や司法書士に相談しましょう。

孤独死で特殊清掃が必要なときの注意点は親が自宅で亡くなったら(孤独死)で解説しています。

放棄を考えているときの遺品の扱いは遺品整理はいつから?相続の注意点で説明しています。

相続放棄したあとの固定資産税の扱いは相続した家の固定資産税で説明しています。

相続人が全員放棄したあとの財産の扱いは相続財産清算人とはで説明しています。

相続放棄を考えているときに葬儀費用をどう払うかは葬儀費用は誰が払う?で説明しています。

住宅ローンが残る家と相続放棄の関係は、親が亡くなったら住宅ローンはどうなる?(団信・抵当権の抹消・根抵当権)で確認できます。

放棄が受理されたことを銀行・法務局・債権者に示す書類は相続放棄申述受理証明書の取り方で説明しています。

借金があるか分からず、財産も残したい場合の方法は限定承認とはで説明しています。

よくある質問

「財産はいらない」と家族に伝えれば、放棄したことになりますか?

なりません。家族の間で「何ももらわない」と決めただけでは、借金を受け継ぐ立場は残ります。

借金から逃れたいなら、家庭裁判所での相続放棄が必要です。

遺産分割協議で「何も取得しない」と決めることとは、効果がまったく違います。

亡くなってから3か月以上たってから借金がわかりました

3か月の期限は「相続が始まったことを知ったとき」から数えます。

事情によっては、借金の存在を知ったときから数えることが認められる場合もあります。

すぐに弁護士や司法書士に相談してください。

相続放棄を取り消せますか?

一度認められた相続放棄は、原則として取り消せません。後から財産が見つかっても、相続人に戻ることはできません。

相続人全員が放棄したらどうなりますか?

次の順位の相続人も含めて全員が放棄すると、相続人がいない状態になります。

その場合、利害関係のある人などの申立てにより家庭裁判所が相続財産清算人を選び、財産の整理が行われます。

未成年の子の相続放棄はどうするのですか?

未成年の子の放棄は、親などの法定代理人が代わりに申し出ます。

ただし、親も相続人で、子だけが放棄する場合などは、利益が相反するため、子のために特別代理人を選ぶ必要があります。

放棄したことは、ほかの相続人に知らされますか?

家庭裁判所から、ほかの相続人に自動的に知らせが届くわけではありません。

次の順位の親族が知らないうちに相続人になっていた、ということがないよう、自分から伝えておきましょう。

家族全員で一緒に申し出られますか?

1人ずつ申述書を作りますが、同じ家庭裁判所にまとめて出すことはできます。

同じ戸籍は1通で足りるとされています。

放棄する前に、葬儀代を亡くなった方の預金から払ってもいいですか?

社会的に相当な範囲の葬儀費用を亡くなった方の財産から払っても、相続を受け入れたことにはならないと判断した裁判例があります。

ただし、金額や状況によって判断が分かれるおそれがあります。

放棄を考えているなら、葬儀代は自分のお金で立て替え、領収書を残しておくのが安全です。

放棄したら、遺品の形見分けもできませんか?

写真や手紙など、財産としての価値がほとんどない物を受け取ることは、問題になりにくいとされています。

一方、貴金属や高価な美術品など、価値のある物を受け取ると、財産を処分したとみなされるおそれがあります。

迷う物は、放棄の手続きが終わるまで手をつけないでおきましょう。

3か月の延長はどうやって申し立てますか?

「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を、3か月の期限が過ぎる前に家庭裁判所に申し立てます。

財産の調査に時間がかかっているなど、延長が必要な理由を書いて申し立て、家庭裁判所が認めれば期間が延びます。

まとめ

  • 相続放棄は、財産も借金も受け継がないこと。家庭裁判所への申し出が必要
  • 期限は知った日から3か月以内。費用は収入印紙800円と郵便切手
  • 放棄を考えているなら、亡くなった方の財産には手をつけない
  • 放棄すると次の順位の親族に相続が移るので、事前に知らせておく

監修者

行政書士(2018年11月開業)・社会保険労務士試験合格。遺産分割協議書の作成や相続人の調査(戸籍の収集)など、相続の書類づくりに携わっています。

このサイトでは、法務局・裁判所・国税庁・金融機関などが公表している一次資料で確かめた内容だけを書いています。詳しくは運営者情報をご覧ください。

参考資料:裁判所「相続の放棄の申述」/民法915条・921条・939条(e-Gov法令検索)

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