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葬儀費用は誰が払う?故人の預金から払う方法(仮払い制度)・相続放棄との関係・相続税の控除(計算つき)

葬儀費用は誰が払う 相続手続き
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家族が亡くなると、すぐに葬儀の費用を払わなければなりません。

ところが、亡くなった方の預金は、銀行が死亡を知ると引き出せなくなります。

「葬儀費用は誰が払うのか」「故人の預金から払ってよいのか」と迷う方は多いでしょう。

相続放棄をするつもりなら、払ってよいのかも気になるところです。

この記事では、民法、法務省の案内、国税庁のタックスアンサー、裁判例をもとに、葬儀費用の負担と払い方を説明します。

預金の仮払い制度でいくら引き出せるかは、記事の中の自動計算で確かめられます。

先に結論
  • 葬儀費用を誰が負担するかは、民法に決まりがない。相続人で話し合って決めるのが基本
  • 話し合いで決まらない場合、葬儀を主宰した人(喪主など)が負担するとした裁判例がある
  • 故人の預金は、遺産分割の前でも仮払い制度で一部を引き出せる(1つの金融機関で150万円まで)
  • 相続放棄を考えている人が故人の財産から払うのは、社会的に相当な額にとどめる
  • 相続税の計算では、葬儀費用を遺産から差し引ける。ただし香典返し・墓石・初七日などの法事の費用は対象外

この記事の監修:行政書士(2018年開業・社会保険労務士試験合格)。法務局・裁判所・国税庁などの一次資料で内容を確認しています。

葬儀費用の相場と内訳

葬儀費用は、葬儀の形式や地域、参列者の人数で大きく変わります。

費用は、主に次の3つに分かれます。

区分 主な内容
葬儀社に払う費用 祭壇、棺、遺体の搬送・安置、火葬の手配、式場の使用料、スタッフの人件費など
飲食・返礼品の費用 通夜ぶるまい、精進落とし、会葬御礼の品など(参列者の人数で変わる)
寺院などへのお礼 読経料、戒名料(お布施)など

火葬場の使用料は、自治体の公営か民営か、住民かどうかで違います。

葬儀社の見積もりに含まれない費用もあるので、何が含まれているかを確認しましょう。

葬儀の形式による違い

形式 内容 費用の傾向
一般葬 通夜と告別式を行い、知人や近所の人も参列する 参列者が多いほど飲食・返礼品が増える
家族葬 家族や親しい人だけで通夜と告別式を行う 人数が少ない分、飲食・返礼品が減る
一日葬 通夜を行わず、告別式と火葬を1日で行う 式場の使用や飲食が1日分になる
直葬(火葬式) 通夜・告別式を行わず、火葬だけを行う 最も費用を抑えやすい

あとで相続人の間でもめないよう、形式と見積もりは、できるだけ相続人で共有してから決めましょう。

葬儀社の費用を前もって比べたいとき

葬儀費用は、選ぶプランと追加の費用で大きく変わります。

資料を取り寄せて総額の内訳を見ておくと、葬儀社を比べやすくなります。

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プランの内容と料金は公式サイトで確認してください。

葬儀費用は誰が払うのか

葬儀費用を誰が払うかの決め方

葬儀費用を誰が負担するかについて、民法には決まりがありません。

そのため、相続人の間で話し合って決めるのが基本です。

決め方の例 内容
喪主が払う 葬儀を行った喪主が負担する
相続人で分ける 法定相続分などの割合で負担する
遺産から払う 故人の預金などから払い、残りを遺産分割する
故人が用意していた 生前の葬儀の契約や、葬儀費用に充てる保険などを使う

話し合いで決まらないとき

相続人の間で合意がない場合の裁判例があります(名古屋高等裁判所平成24年3月29日判決)。

この判決は、葬儀費用は葬儀を主宰した人が負担するのが相当としました。

葬儀を主宰した人とは、自分の判断で葬儀社と契約し、葬儀を準備して行った人のことで、多くは喪主です。

ただし、これは個別の事件についての判断です。

故人の遺言や、相続人の間の合意がある場合は、それに従います。

遺産から払った葬儀費用を、遺産分割でどう扱うかも、相続人全員の合意で決められます。

合意した内容は、遺産分割協議書に書いておくと、あとのもめごとを防げます。

書き方は遺産分割協議書の書き方で説明しています。

故人の預金から払う方法(仮払い制度)

銀行は、預金者が亡くなったことを知ると、口座の入出金を止めます。

止まった預金は、原則として遺産分割が終わるまで引き出せません。

ただし、2019年7月から、遺産分割の前でも預金の一部を引き出せるようになりました(民法909条の2)。

相続人が1人で手続きでき、ほかの相続人の同意はいりません。

葬儀費用や当面の生活費に使えます。

引き出せる額

預金の仮払い制度で引き出せる額の計算

引き出せる額は、金融機関ごとに次の式で計算します。

亡くなった日の預金残高 × 3分の1 × 払戻しを受ける人の法定相続分

(1つの金融機関で150万円まで)

たとえば、配偶者と子2人が相続人の場合、子1人の法定相続分は4分の1です。

A銀行の残高が900万円なら、子1人が引き出せるのは900万円×3分の1×4分の1=75万円です。

残高が多くても、1つの金融機関で引き出せるのは、支店や口座をまとめて150万円までです。

預金の仮払い(払戻し)額を計算

あなたの法定相続分

金融機関ごとの残高(亡くなった日・万円)

1つ目 万円

2つ目 万円

3つ目 万円

法定相続分は法定相続人の範囲と順位で確認できます。

手続きに必要な書類

必要な書類は金融機関によって違いますが、一般に次のものを求められます。

  • 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本(または法定相続情報一覧図の写し)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 払戻しを受ける人の印鑑登録証明書
  • 払戻しを受ける人の本人確認書類

戸籍を集めるのに時間がかかるので、葬儀の支払いにすぐ間に合わないこともあります。

戸籍の集め方は相続の戸籍謄本の集め方、一覧図は法定相続情報一覧図で説明しています。

仮払いで引き出した額の扱い

仮払いで引き出した額は、その人が遺産の一部を先に受け取ったものとして扱われます。

あとの遺産分割では、その分を差し引いて計算します。

葬儀費用に使った場合は、領収書を残し、ほかの相続人に使い道を説明できるようにしておきましょう。

150万円を超えて必要なとき

もっと多くの預金が必要な場合は、家庭裁判所の手続きを使う方法があります。

遺産分割の調停か審判を申し立てたうえで、預金の仮分割の仮処分を申し立てます(家事事件手続法200条3項)。

家庭裁判所が必要と認め、ほかの相続人の利益を害さない場合に、預金の全部または一部の取得が認められます。

手続きに時間がかかるため、葬儀費用の支払いには向かないことが多いです。

相続放棄を考えている場合の注意

故人に借金が多い場合など、相続放棄を考えている人は注意が必要です。

相続人が相続財産を処分すると、相続を承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなることがあります(民法921条1号)。

一方で、故人の預金から葬儀費用を払った事案の裁判例があります(大阪高等裁判所平成14年7月3日決定)。

この決定は、社会的にみて不相当に高額でない葬儀費用の支払いは、相続財産の処分にあたらないとしました。

ただし、どこまでが「相当」かは事案ごとに判断され、決まった金額の基準はありません。

相続放棄を考えている場合 考え方
できるだけ安全にしたい 葬儀費用は自分のお金で払い、故人の財産に手をつけない
故人の預金から払う場合 身分相応の質素な葬儀にとどめ、領収書を残す
避けたいこと 仏壇や墓石の購入、香典返しや法事の費用を故人の財産から払う

相続放棄は、自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に申述します。

手続きは相続放棄とはで説明しています。

故人の借金を払っても、相続放棄ができなくなることがあるので、先に借金の有無を調べましょう。

調べ方は相続財産の調べ方で説明しています。

香典は誰のものか

香典は、故人ではなく、喪主など遺族への贈り物と考えられています。

そのため、香典は遺産には含まれず、遺産分割の対象になりません。

香典は、葬儀費用の一部に充てるのが一般的です。

また、社会通念上相当と認められる範囲の香典には、贈与税や所得税はかかりません。

相続税の計算で差し引ける葬儀費用

相続税で差し引ける葬儀費用と差し引けない費用

相続税の計算では、相続人や包括受遺者が負担した葬儀費用を、遺産の額から差し引けます。

差し引けるもの・差し引けないものは、国税庁のタックスアンサーで次のとおり示されています。

差し引けるもの 差し引けないもの
火葬・埋葬・納骨の費用(仮葬式と本葬式の両方を含む) 香典返しの費用
遺体や遺骨の移送の費用 墓石・墓地の購入費用や、墓地を借りる費用
お通夜など、葬式の前後にかかった通常欠かせない費用 初七日など法事の費用
寺院などへの読経料などのお礼
死体の捜索、死体や遺骨の運搬の費用

お布施など領収書が出ないものは、日付、支払先、金額をメモに残しておきましょう。

相続税がかかるかどうかは相続税はいくらからかかる?で確認できます。

相続税の申告が必要な場合や、個別の費用を差し引けるかどうかの判断は、税理士に相談しましょう。

健康保険から出る葬祭費・埋葬料

故人が加入していた健康保険から、葬儀や埋葬にかかる費用の一部が支給されます。

故人の健康保険 支給されるもの
国民健康保険・後期高齢者医療制度 葬祭費(葬儀を行った人に支給。額は市区町村などで違う)
会社の健康保険(協会けんぽなど) 埋葬料(5万円)

いずれも申請しないと受け取れず、期限は2年です。

詳しくは葬祭費・埋葬料の申請で説明しています。

葬儀のあとの費用(納骨・お墓)

葬儀のあとも、四十九日の法要、納骨、お墓の準備などに費用がかかります。

お墓や法事の費用は、相続税の計算で差し引けません。

一方、墓地や墓石などの祭祀財産は、相続税がかかりません。

そのため、お墓を買うかどうかは、生前に決めておく家族もいます。

相続放棄を考えている人は、墓石の費用を故人の財産から払わないようにしてください(民法921条1号)。

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お墓を持たない方法は永代供養と樹木葬、お墓の片付けは墓じまいの手順と費用で説明しています。

葬儀のあとのお墓の準備や費用は、お墓を建てる費用と流れ|墓石・永代使用料・管理料と相続税を参考にしてください。

死亡届の書き方と、火葬許可証を受け取るまでの流れは死亡届の書き方と出し方で説明しています。

香典返しの相場・時期と、香典返しの費用の税金の扱いは香典返しの相場・時期・挨拶状で説明しています。

家族葬の流れと見積もりの確かめ方は家族葬とはで説明しています。

喪主の決め方とやることは喪主の決め方とやること一覧で説明しています。

直葬を選ぶ場合の流れと費用は直葬(火葬式)とは?で説明しています。

よくある質問

喪主と相続人が違う場合、喪主が全部払うのですか?

決まりはありません。

相続人で話し合って、遺産から払う、相続人で分けるなどと決められます。

合意できない場合は、葬儀を主宰した人が負担するとした裁判例があります。

銀行に死亡を伝える前に、ATMで引き出してもよいですか?

口座が止まる前でも、預金は遺産で、相続人全員のものです。

引き出すと、ほかの相続人とのもめごとや、相続放棄ができなくなる原因になりえます。

やむをえず引き出した場合は、領収書と使い道の記録を残してください。

故人が葬儀社と生前契約をしていました

契約の内容と、費用を前払いしていたかを葬儀社に確認しましょう。

前払いしていれば、遺族の負担は契約にない追加の費用だけになることがあります。

葬儀費用を立て替えた分は、遺産から返してもらえますか?

相続人全員が合意すれば、遺産から立て替えた分を受け取れます。

遺産分割協議書に「葬儀費用として○○円を△△が取得する」などと書いておきましょう。

まとめ

  • 葬儀費用の負担は民法に決まりがなく、相続人の話し合いで決める。合意がなければ主宰者(喪主など)が負担するとした裁判例がある
  • 故人の預金は、仮払い制度で「残高×3分の1×法定相続分」を、1つの金融機関で150万円まで引き出せる
  • 相続放棄を考えているなら、故人の財産から払うのは相当な額の葬儀費用にとどめ、墓石や法事の費用は払わない
  • 香典は遺族への贈り物で、遺産分割の対象にならない
  • 相続税の計算で葬儀費用は差し引けるが、香典返し・墓石・墓地・初七日などの法事の費用は差し引けない

監修者

行政書士(2018年11月開業)・社会保険労務士試験合格。遺産分割協議書の作成や相続人の調査(戸籍の収集)など、相続の書類づくりに携わっています。

このサイトでは、法務局・裁判所・国税庁・金融機関などが公表している一次資料で確かめた内容だけを書いています。詳しくは運営者情報をご覧ください。

参考資料:民法909条の2・921条/家事事件手続法200条3項/法務省「遺産分割前の預貯金の払戻し制度」/国税庁タックスアンサーNo.4129「相続財産から控除できる葬式費用」/名古屋高等裁判所平成24年3月29日判決/大阪高等裁判所平成14年7月3日決定(2026年10月2日確認)

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