相続した実家や土地を売ろうとしたら、不動産会社に「境界は確定していますか」と聞かれた。
古い土地では、境界の杭がなくなっていたり、隣との境があいまいだったりすることがよくあります。
この記事では、民法と法務省・日本土地家屋調査士会連合会の資料をもとに、相続した土地を売る前の測量と境界確定を説明します。
費用の目安、だれに頼むか、隣の人が協力してくれないときの筆界特定制度もまとめました。
土地家屋調査士に相談する前の準備シートを、Wordで用意しています。
- 境界の確定は法律上の義務ではないが、境界があいまいだと売りにくく、売ったあとのトラブルにもなりやすい
- 境界の確認と測量は土地家屋調査士に頼む。隣地や道路の所有者に立ち会ってもらい、境界を確認する
- 費用は土地の形や隣地の数で変わる。日本土地家屋調査士会連合会の調査では、売買のための地積更正登記の平均報酬は44万1,391円(税抜)
- 境界標の設置費用は隣と半分ずつ、測量費用は土地の広さに応じて分けるのが民法の原則(民法224条)
- 隣の人が協力しないときは、法務局の筆界特定制度を使える
「境界」と「筆界」の違い

ふだん「境界」と呼んでいるものには、2つの意味があります。
| 言葉 | 意味 | 当事者の合意で変えられるか |
|---|---|---|
| 筆界 | 土地が登記されたときに、その土地の範囲を区切るものとして定められた線 | 変えられない |
| 所有権の境界 | どこまでが自分の土地として所有しているかの線 | 隣との合意で変わることがある |
法務省は、筆界は所有者同士の合意などで変更できず、所有権の範囲と一致しないこともあると説明しています。
売買では、この2つが一致しているかを確認することが大切です。
相続した土地で境界が問題になりやすい理由
- 境界の杭(境界標)が、工事や年月で失われている
- 登記簿の面積と、実際の面積が違う
- 親の代に隣と口約束で決めたことが、子の世代に伝わっていない
- 隣の土地も相続されていて、所有者が分からない・遠くに住んでいる
- 塀や樹木、屋根などが、どちらかに越境している
相続人がその土地に住んでいなかった場合は、境界の事情を知らないまま売ることになりがちです。
売る前に確認しておくと、買主への説明もしやすくなります。
売るときに境界の確定が求められる理由
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 買主の不安 | 境界が分からない土地は、建物を建てる位置や面積が決められない |
| 面積で価格を決める売買 | 実際に測った面積で代金を決める場合(実測売買)は、測量が前提になる |
| 売ったあとのトラブル防止 | 面積不足や越境が後で分かると、売主の契約不適合責任が問題になる |
| 土地を分けて売る・分ける | 分筆登記には、土地全体の測量と境界の確認が必要 |
契約不適合責任については、契約不適合責任とはで説明しています。
反対に、測量をしないで売る判断もあります。
境界標がすべてそろい地積測量図と一致している土地や、測量費用に見合わない価格の土地です。
測量するかどうかは、不動産会社と相談して決めます。
法務局で取れる図面の見方
測量を頼む前に、法務局で取れる図面を見ておくと、境界の状況のおおよそが分かります。
| 図面 | 分かること | 注意点 |
|---|---|---|
| 公図(地図に準ずる図面) | 土地のおおよその形と、隣の土地との位置関係 | 明治時代の図面をもとにしたものもあり、形や長さは正確でないことがある |
| 法14条地図 | 測量にもとづく正確な土地の位置と形 | 整備されていない地域も多い |
| 地積測量図 | 測量した面積、境界点の位置、境界標の種類 | 分筆や地積更正をした土地にしかない。古いものは精度が低いこともある |
公図しかない土地や、地積測量図が古い土地は、境界の確認に手間がかかることが多いです。
図面は、登記事項証明書と同じく法務局で請求できます。
境界確定の流れ

-
STEP 1資料を集める登記事項証明書、公図、地積測量図、昔の測量図や境界確認書を探す
-
STEP 2土地家屋調査士に相談する資料と現地を見てもらい、見積もりを取る
-
STEP 3現地を調査・測量する境界標の有無や、塀・建物の位置を測る
-
STEP 4隣地・道路の所有者と立ち会う境界の位置を現地で確認する。道路との境は市区町村などと確認する
-
STEP 5境界確認書を取り交わす確認した境界を書面に残し、境界標を設置する
-
STEP 6必要なら登記する面積が違えば地積更正登記、土地を分けるなら分筆登記をする
隣地の所有者が多い場合や、所有者が見つからない場合は、時間がかかることがあります。
売却の予定が決まったら、早めに相談を始めましょう。
測量のために隣の土地に入れる
土地の所有者は、境界標の調査や境界に関する測量のために、必要な範囲で隣地を使用できます(民法209条1項)。
あらかじめ、目的・日時・場所・方法を隣地の所有者などに通知します(同条3項)。
費用の目安
土地家屋調査士の報酬は自由化されていて、事務所ごとに決まります。
日本土地家屋調査士会連合会は、3年に一度、会員へのアンケートで報酬の目安を公表しています。
| 業務(連合会の想定条件) | 平均報酬額(税抜) | 中央値 |
|---|---|---|
| 土地地積更正登記(土地売買のため・180㎡・隣接地6筆と筆界確認) | 441,391円 | 421,000円 |
| 土地分筆登記(264㎡を二筆に・隣接地5筆) | 482,028円 | 461,415円 |
| 土地地目変更登記(雑種地を宅地に) | 52,691円 | 50,000円 |
出典は、日本土地家屋調査士会連合会のリーフレットです。
「土地家屋調査士に依頼するといくらかかるの?」(2025年度アンケートの全国平均)に載っています。
報酬のほかに、収入印紙代・交通費・境界杭の費用などの実費がかかります。
隣地の数、現場の状況、相続登記が済んでいるかなどで金額は変わるので、見積もりで内訳を確かめてください。
費用は誰が負担するか
民法では、境界標の設置と保存の費用は、隣同士で等しい割合で負担するとされています(民法223条・224条)。
測量の費用は、土地の広さに応じて分担します(民法224条ただし書)。
相続人が複数いる場合は、売却代金から精算するかなど、相続人の間で決めておきましょう。
隣の人が協力してくれないとき(筆界特定制度)

隣地の所有者が立会いに応じない、境界の位置で意見が合わない、という場合は、法務局の筆界特定制度を使えます。
| 項目 | 内容(法務省の案内) |
|---|---|
| しくみ | 筆界特定登記官が、筆界調査委員の意見を踏まえて、もともとの筆界の位置を特定する |
| 申請できる人 | 土地の所有者として登記されている人やその相続人など |
| 申請先 | 土地を管轄する法務局・地方法務局(本局) |
| 手数料 | 土地の価格で決まる。申請人の土地と隣の土地の価格の合計が4,000万円なら8,000円 |
| そのほかの費用 | 測量が必要になれば、その費用を負担する |
法務省は、裁判よりも早く、費用負担も少なくすむ制度と説明しています。
所有権の範囲そのものでもめている場合は、弁護士に相談してください。
越境しているものがあるとき
隣の樹木の枝が越境しているときは、まず竹木の所有者に切除を求めます(民法233条1項)。
次のいずれかにあたるときは、自分で切り取れます(同条3項)。
催告しても相当の期間内に切除しない、所有者が分からない、急迫の事情がある、の3つです。
根が越境している場合は、自分で切り取れます(同条4項)。
塀や屋根、給排水管などの越境は、売る前に隣と話し合い、覚書(越境の確認書)を交わしておく方法がよく使われます。
越境の事実は、告知書に書いて買主に伝えます。
隣の土地の所有者が分からないとき
隣の土地の所有者が亡くなっていて相続登記がされていない、遠くに住んでいる、ということもあります。
- 登記事項証明書で、隣地の登記名義人を確認する
- 土地家屋調査士に、所有者の調査を含めて相談する
- どうしても立会いができない場合は、筆界特定制度を検討する
登記事項証明書の取り方は登記簿謄本と固定資産評価証明書の取り方で説明しています。
だれに頼むか(専門家の役割)
| やること | 担当する専門家 |
|---|---|
| 境界の調査・測量、地積更正登記・分筆登記 | 土地家屋調査士 |
| 相続登記(名義変更) | 司法書士 |
| 境界・所有権をめぐる争い、交渉 | 弁護士 |
| 売却の相談、測量の要否の判断 | 不動産会社 |
| 売ったときの税金 | 税理士 |
相続登記がまだの場合は、先に済ませておくと、測量や売却の手続きが進めやすくなります(相続登記の必要書類)。
売る前に、価格と測量の要否を確かめる
測量に数十万円かかる場合、土地の価格によっては費用に見合わないこともあります。
まず不動産会社に査定を頼み、測量をして売るか、現況のまま売るかを相談するのが効率的です。
境界があいまいな土地や越境がある土地でも、買取であれば、現況のまま引き取ってもらえることがあります。
仲介の査定と買取の査定の両方を取り、測量費用を差し引いた手取りで比べましょう。
なお、相続放棄を考えている相続人がいる場合は注意が必要です。
査定や売却を進める前に、放棄するかどうかを決めてください(民法921条1号)。
相続した不動産の売却・買取の相談先(比較)
実家の状態によっては、仲介より買取のほうが早く手放せることがあります。
| 相談先 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 【PR:持ち家売却】 持ち家売却
|
住める状態の家・マンション・土地を仲介で売る | 複数の不動産会社の訪問査定を一度に申し込める |
| 【PR:ミライアス】 ミライアス |
家・マンション・土地を仲介で売る | 対応エリアは公式サイトで確認 |
| 【PR:不動産SHOPナカジツ】 不動産売却・査定・買取の依頼なら【不動産SHOPナカジツ】 |
家・マンション・土地を売る(仲介のほか、買取・買取保証付き仲介も選べる) | 対応エリアは公式サイトで確認 |
| 【PR:ラクウル】 【相続の窓口】 |
相続した不動産の買取(再建築不可・共有持分・借地権・事故物件など) | サービス内容は公式サイトで確認 |
| 【PR:ワケガイ】 【ワケガイ】 |
共有持分・借地権・再建築不可・事故物件・長く空いた空き家 | 仲介で売りにくい物件向け |
住める状態の家は仲介の査定、傷みが大きい家や権利関係が複雑な家は買取の査定も取り、両方の金額を比べてから売り方を決めましょう。
測量前の準備シート(Word・無料)
土地家屋調査士に相談する前に、集めておく資料と、家族で確認しておくことをまとめた準備シートをWordで用意しました。
無料ダウンロード
- 集める資料のチェックリスト(登記事項証明書・公図・地積測量図・昔の測量図・境界確認書など)
- 隣地・道路の一覧表(所有者・連絡先・境界標の有無・越境の有無)
- 家族への聞き取りメモ(親の代の境界の約束・過去の測量・塀を作った経緯)
- 見積もりで確認する項目(報酬・実費・期間・登記の有無)
よくある質問
境界の確定をしないと売れませんか?
法律上、境界の確定は売買の条件ではありません。
ただし、買主や不動産会社から求められることが多く、確定していないと価格や売れやすさに影響することがあります。
登記簿の面積と実際の面積が違います
古い土地では、登記簿の面積と実測の面積が違うことがあります。
面積を正しくするには、土地家屋調査士に測量してもらい、地積更正登記をします。
代金を登記簿の面積で決めるか、実測の面積で決めるかは、売買契約で決めます。
境界標が見当たりません
土に埋もれていることもあるので、まず土地家屋調査士に現地を見てもらいます。
なくなっている場合は、隣と境界を確認したうえで、新しく設置します。
測量にどのくらい時間がかかりますか?
隣地の数や、所有者と連絡が取れるかで大きく変わります。
立会いの日程調整に時間がかかることが多いので、売却の予定が決まったら早めに相談しましょう。
相続人が複数いる土地でも測量できますか?
できます。
ただし、立会いや境界確認書への署名は、共有者の誰が対応するかを相続人の間で決めておきます。
遺産分割で土地を取得する人を先に決めておくと、手続きが進めやすくなります。
まとめ
監修者
行政書士(2018年11月開業)・社会保険労務士試験合格。遺産分割協議書の作成や相続人の調査(戸籍の収集)など、相続の書類づくりに携わっています。
このサイトでは、法務局・裁判所・国税庁・金融機関などが公表している一次資料で確かめた内容だけを書いています。詳しくは運営者情報をご覧ください。
参考資料:民法209条・223条・224条・233条・921条/法務省「筆界特定制度」(Q&A)/日本土地家屋調査士会連合会「土地家屋調査士に依頼するといくらかかるの?」(2025年度アンケート・全国平均・税抜)。費用や期間は土地の状況によって大きく異なります。依頼前に土地家屋調査士から見積もりを取ってください。

