親が住んでいた分譲マンションを相続すると、一戸建てとは違う手続きや費用が出てきます。
管理組合への届出、毎月の管理費と修繕積立金、総会の議決権などです。
この記事では、相続したマンションで最初にやることを、区分所有法と国土交通省のマンション標準管理規約をもとに順番に整理します。
そのうえで、住む・貸す・売るの判断と、それぞれの注意点を説明します。
2026年4月1日に施行された区分所有法の改正のうち、相続人に関係する点も取り上げます。
管理組合への届出の下書きと、売る前の確認リストはWordで用意しました。
- 相続で区分所有者になると、管理組合の組合員になる。標準管理規約では直ちに書面で届け出ることになっている(31条)
- 管理費・修繕積立金は亡くなったあとも毎月かかる。口座の凍結で引き落としが止まるので、早めに支払い方法を変える
- 亡くなる前の滞納分は、相続人が相続分に応じて引き継ぐ(民法896条・899条)。売るときは買主にも請求できるため、精算が必要(区分所有法8条)
- 相続人が複数で共有している間は、議決権を行使する人を1人決める(区分所有法40条)
- 空き家の3,000万円控除は、区分所有建物(分譲マンション)には使えない(国税庁No.3306)
相続したマンションで最初にやること

相続したマンションの手続きは、だいたい次の順で進みます。
| 順番 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 管理会社・管理組合へ連絡 | 亡くなったことと、当面の連絡先を伝える |
| 2 | 管理費の支払い方法を変える | 故人の口座が凍結されると引き落としができない |
| 3 | 滞納・ローン・駐車場などの契約を確認 | 滞納の有無、住宅ローン、駐車場・駐輪場の契約 |
| 4 | 遺産分割で誰が引き継ぐかを決める | 共有のままにすると、売る・貸すに全員の同意が必要になる |
| 5 | 相続登記・管理組合への届出 | 取得を知った日から3年以内の登記が義務 |
| 6 | 住む・貸す・売るを決める | 管理費・修繕積立金と固定資産税の負担も含めて比べる |
住宅ローンが残っている場合は、団体信用生命保険の手続きが先になります。
詳しくは親が亡くなったら住宅ローンはどうなる?で説明しています。
管理組合への届出
区分所有法では、マンションの区分所有者は全員で建物や敷地を管理する団体を構成します(区分所有法3条)。
この団体が、一般に「管理組合」と呼ばれるものです。
相続で区分所有者になれば、加入の手続きをしなくても組合員になります。
国土交通省のマンション標準管理規約(単棟型)では、組合員の資格を取得した人は、直ちにその旨を書面で管理組合に届け出ることとされています(31条1項)。
届け出た内容に変更があったときも、直ちに届け出ます(31条2項)。
実際の届出方法や様式は、そのマンションの管理規約で決まっています。
まず管理会社に連絡し、所定の様式と必要な書類を確認しましょう。
遺産分割の前はどうするか
遺産分割が終わるまで、マンションは相続人全員の共有です。
この段階では、誰が窓口になるかと連絡先を管理会社に伝えておくのが現実的です。
遺産分割で取得する人が決まり、相続登記をしたら、その人の名前で改めて届け出ます。
管理組合から登記事項証明書の写しなどを求められることがあるので、様式とあわせて確認してください。
共有の間は議決権を行使する人を1人決める
専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は持分の価格の過半数で、議決権を行使する人を1人決めなければなりません(区分所有法40条)。
標準管理規約でも、共有者をあわせて1人の組合員とみなし、議決権を行使する1人を総会の前に理事長に届け出ることになっています(46条2項・3項)。
総会の招集通知は、議決権を行使する人が決まっていればその人に、いなければ共有者の1人に送られます(区分所有法35条2項)。
大規模修繕や管理費の値上げを決める総会もあるので、通知を受け取る人を決めておきましょう。
管理費・修繕積立金の扱い

管理費と修繕積立金は、区分所有者である限り毎月かかります。
亡くなったあとの分は、マンションを引き継ぐ相続人が負担します。
遺産分割前は共有者として、それぞれの持分に応じて負担するのが原則です(民法253条)。
口座の凍結で引き落としが止まる
銀行は、口座の名義人が亡くなったことを知ると、その口座の取引を止めます。
管理費の引き落とし口座が故人の口座だと、引き落としができず、そのまま滞納になってしまいます。
管理会社に連絡して、相続人の口座からの引き落としや振込に切り替えてもらいましょう。
銀行での相続手続きは相続手続きの必要書類一覧表で確認できます。
亡くなる前の滞納分
故人に管理費や修繕積立金の滞納があった場合、その支払い義務も相続の対象です。
相続人は、相続分に応じて故人の権利義務を引き継ぎます(民法896条・899条)。
また区分所有法は、管理費等の債権を区分所有者の特定承継人(買主など)にも請求できると定めています(区分所有法8条)。
標準管理規約にも同じ定めがあります(26条)。
つまり、滞納を残したまま売ると、管理組合は買主にも請求できるため、売却の前に精算するのが一般的です。
滞納の有無と金額は、管理会社に確認してください。
修繕積立金は返ってこない
標準管理規約では、組合員は納めた管理費等について返還や分割を請求できないとされています(60条7項)。
売るときも、これまで積み立てた修繕積立金が戻ってくるわけではありません。
積立金はマンションの共用部分の修繕のために使われ、買主が引き続き負担していく仕組みです。
住む・貸す・売るの比べ方

相続したマンションの使い道は、大きく3つです。
| 方法 | 向いているケース | かかるお金・注意点 |
|---|---|---|
| 住む | 今の住まいより通勤・生活に便利 | 管理費・修繕積立金・固定資産税。築年数による修繕の予定を確認 |
| 貸す | 手放したくない、家賃収入を得たい | 管理費等は貸主の負担。入居者の募集・修繕・規約の遵守。家賃は不動産所得として確定申告 |
| 売る | 住む予定がなく、毎月の負担をなくしたい | 相続登記が先に必要。仲介手数料・税金。滞納の精算 |
空室のまま持ち続けても、管理費・修繕積立金・固定資産税はかかり続けます。
年間でいくら出ていくかを先に計算してから、どれにするかを決めましょう。
固定資産税の扱いは相続した家の固定資産税は誰が払う?で説明しています。
修繕の予定を確認する
マンションの価値と今後の負担は、管理の状態で大きく変わります。
管理会社や管理組合から、次の資料を見せてもらいましょう。
- 管理規約・使用細則(ペット・民泊・リフォームのルールなど)
- 長期修繕計画(次の大規模修繕の時期と、修繕積立金の値上げ予定)
- 最近の総会の議事録(修繕や費用について何が決まったか)
- 管理費・修繕積立金の額と、滞納の有無
標準管理規約では、組合員や利害関係人は、理由を付けた書面で長期修繕計画書などの閲覧を請求できます(64条)。
貸す場合の注意点
専有部分を人に貸すときは、借りる人にも管理規約と使用細則を守らせなければなりません(標準管理規約19条1項)。
標準管理規約では、賃貸借契約に規約を守る旨の条項を入れ、借りる人から管理組合に誓約書を出してもらうことになっています(19条2項)。
借りた旨の届出も、借りる人から管理組合に出してもらいます(19条3項)。
民泊やペットなど、使い方のルールはマンションごとに違うので、貸す前に規約を確認してください。
相続人が海外に住んでいる場合
2026年4月1日施行の改正区分所有法で、「国内管理人」の制度ができました(区分所有法6条の2)。
国内に住所がない区分所有者は、国内に住む人を管理人に選び、保存行為や集会の通知の受け取り、議決権の行使、管理費の支払いなどを任せることができます。
選んだときは、管理者などに氏名と住所を通知します(6条の2第3項)。
令和7年改正の標準管理規約にも、国内管理人を選任したときの届出の規定が設けられています。
売る場合の流れと注意点
売るときは、相続登記を済ませてから売買契約を結ぶのが基本です。
- 遺産分割で取得する人を決める(共有のまま売るなら全員が売主になる)
- 相続登記をする
- 管理会社に管理費・修繕積立金・滞納・修繕予定を確認する
- 不動産会社に査定を頼み、売り方(仲介か買取か)を決める
- 売買契約・引渡し。管理費等や固定資産税を日割りで精算する
- 管理組合に資格の喪失を届け出る
相続登記は、相続で取得したことを知った日から3年以内の申請が義務になっています(不動産登記法76条の2)。
登記の申請手続きは司法書士の業務なので、自分でしない場合は司法書士に依頼します。
必要書類は相続登記の必要書類と自分でやる手順で説明しています。
空き家の3,000万円控除はマンションには使えない
相続した空き家を売ったときに譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
分譲マンションは区分所有建物なので、この特例は使えません。
売ったときの税金の基本は相続した不動産を売ったときの税金で説明しています。
具体的な税額や使える特例は、税理士か税務署に確認してください。
相続放棄を考えている人は、売る前に注意
相続財産を処分すると、相続を単純承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなることがあります(民法921条1号)。
売買契約は、放棄するかどうかを決めてから結んでください。
売却の相談先
マンションは一戸建てより相場が調べやすい一方、同じマンション内でも階数や向きで価格が変わります。
複数の会社に査定を頼み、根拠を聞いて比べましょう。
相続した不動産の売却・買取の相談先(比較)
特例の期限が迫っている場合や、ふつうの仲介では売りにくい不動産は、買取の査定もあわせて比べてみましょう。
| 相談先 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
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住める状態の家・マンション・土地を仲介で売る | 複数の不動産会社の訪問査定を一度に申し込める |
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家・マンション・土地を仲介で売る | 対応エリアは公式サイトで確認 |
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家・マンション・土地を売る(仲介のほか、買取・買取保証付き仲介も選べる) | 対応エリアは公式サイトで確認 |
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住める状態の家は仲介の査定、傷みが大きい家や権利関係が複雑な家は買取の査定も取り、両方の金額を比べてから売り方を決めましょう。
媒介契約の選び方は媒介契約の3種類の違いと選び方、仲介手数料の計算は不動産売却の仲介手数料で確認できます。
相続税の評価(2024年1月からの新しいルール)
2024年(令和6年)1月1日以後に相続などで取得した分譲マンションは、相続税の評価方法が見直されています。
国税庁によると、従来の評価額に「区分所有補正率」をかけて評価する場合があります(国税庁タックスアンサーNo.4667)。
補正率は、築年数・総階数・所在階・敷地持分の広さから計算します。
相続税がかかるかどうかや評価額の計算は、税理士に相談してください。
相続税の基本は相続税の計算シミュレーションで確認できます。
相続放棄をする場合
相続放棄をすると、初めから相続人でなかったことになり、マンションも滞納分も引き継ぎません。
ほかの相続人や相続財産清算人に引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で保存しなければなりません。
相続人全員が放棄した場合、管理組合などの利害関係人が家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てることがあります。
2026年4月の改正区分所有法では、所有者不明専有部分管理命令の制度もできました(区分所有法46条の2)。
区分所有者が分からない部屋について、利害関係人の請求により、裁判所が管理人による管理を命じる制度です。
放棄の期限や注意点は相続放棄とは?で説明しています。
届出の下書きと売る前の確認リスト(Word・無料)
管理組合への届出の下書きと、売る前に確認することのリストをWordで用意しました。
管理組合に決まった様式がある場合は、そちらを使ってください。
無料ダウンロード
- 組合員の変更の届出(下書き):マンション名・部屋番号・前の区分所有者・新しい区分所有者・取得の原因と日付・連絡先・議決権を行使する人
- 引き落とし口座の変更、駐車場・駐輪場の契約のメモ
- 売る前の確認リスト:管理規約・長期修繕計画・総会議事録・管理費等・滞納・登記・ローン
よくある質問
管理組合への届出をしないとどうなりますか?
総会の通知や管理費の請求が、故人あてや部屋あてに送られ続けることがあります。
連絡が届かないまま総会で大きな修繕や費用が決まることもあるので、早めに届け出ましょう。
遺産分割が終わるまで管理費は誰が払いますか?
相続人全員が持分に応じて負担するのが原則です。
代表の相続人が立て替え、遺産分割のときに精算する方法もあります。
立て替えた分は、領収書や引き落としの記録を残しておきましょう。
マンションを共有のまま持ち続けてもいいですか?
禁止されてはいません。
ただ、売るときは共有者全員が売主になります。
貸すときも、持分の過半数の同意が要り、期間の長い賃貸では全員の同意が必要になることがあります(民法251条・252条)。
次の相続で共有者がさらに増えることもあるので、遺産分割で1人が取得するか、売って代金を分ける方法も検討してください。
売って分ける方法は換価分割とは?で説明しています。
管理費を滞納していた場合、売ることはできますか?
売ることはできます。
ただ、管理組合は買主にも請求できるので、売却代金から精算するなどの方法を不動産会社と相談して決めます。
まとめ
マンションは、持っているだけで毎月お金がかかります。
管理会社への連絡と資料の確認から始め、家族で方針を決めてください。
参考にした資料
- 建物の区分所有等に関する法律 3条・6条の2・8条・35条・40条・46条の2(e-Gov法令検索)
- 法務省「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律について」
- 国土交通省「令和7年改正マンション標準管理規約(単棟型)」19条・26条・31条・46条・60条・64条
- 国税庁タックスアンサーNo.3306(被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)、No.4667(居住用の区分所有財産の評価)
- 民法253条・896条・899条・921条・940条、不動産登記法76条の2

