相続した実家や土地が「市街化調整区域」にあると分かり、売れるのか、建て替えられるのか不安に思う方は多いでしょう。
市街化調整区域は、原則として新しく建物を建てられない区域です。
そのため、ふつうの住宅地に比べて買い手が限られ、売却に時間がかかることがあります。
この記事では、都市計画法などの法令をもとに、市街化調整区域の意味、相続した家の建て替え、売り方、活用と手放し方、相続税の評価までを説明します。
- 市街化調整区域は「市街化を抑えるべき区域」(都市計画法7条3項)。原則として建物の建築に許可が必要
- 相続した家の建て替えや、別の人が住むための用途変更にも、許可が必要になることが多い
- 許可の基準は自治体ごとに違う。まず市区町村の開発許可の窓口で確認する
- 売るなら、その土地で建築できるかどうかを調べてから、仲介と買取の両方で査定を取る
- 相続放棄を考えている場合は、売る話を進める前に方針を決める(民法921条1号)
市街化調整区域とは

都市計画法では、都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に分けることができます(区域区分・7条)。
| 区域 | 意味(都市計画法7条) | 建物の建築 |
|---|---|---|
| 市街化区域 | すでに市街地になっている区域と、おおむね10年以内に優先的に市街化を進める区域 | 用途地域の範囲で建てられる |
| 市街化調整区域 | 市街化を抑えるべき区域 | 原則として許可が必要 |
| 非線引き区域 | 区域区分がされていない都市計画区域 | 用途地域などの範囲で建てられる |
市街化調整区域は、農地や山林を守り、無秩序に市街地が広がらないようにするための区域です。
そのため、住宅や店舗などを建てるには、都道府県知事など(政令市・中核市などは市長)の許可が必要になります。
自分の土地が市街化調整区域か調べる方法
- 市区町村の都市計画課などの窓口で聞く
- 市区町村のホームページの都市計画図(都市計画情報の地図)で確認する
- 固定資産税の課税明細書で「都市計画税」がかかっていないか見る(都市計画税は原則として市街化区域の土地にかかる)
- 不動産の売買のときに受け取った重要事項説明書を見る
建物を建てるときの許可
市街化調整区域では、建物を建てるための土地の造成(開発行為)には開発許可(都市計画法29条)が必要です。
造成を伴わない建築や建て替え、用途の変更にも、原則として許可が必要です(43条)。
| ケース | 許可が必要か(原則) |
|---|---|
| 農業をする人の住宅・農業用の建物 | 開発許可は不要(29条1項2号) |
| 公益上必要な建物(駅・図書館など) | 不要なものがある |
| 一般の住宅を新しく建てる | 許可が必要。34条の基準にあてはまる場合に限られる |
| 今ある家を建て替える | 許可が必要なことが多い |
| 農家住宅などを、別の人が住む家として使う | 用途の変更として許可が必要になることがある |
許可される主なケース(都市計画法34条)
市街化調整区域での開発は、34条に挙げられた基準にあてはまる場合に限って許可されます。
- 周辺に住む人の日常生活に必要な店舗など(1号)
- 市街化区域に近く、多くの建物が連なっている区域として、条例で指定された区域での開発(11号)
- 条例で定めた区域・目的の開発(12号)
- 区域区分が決まる前から土地を持っていた人が、届出をして行う自己用の建築(13号)
- 開発審査会の議を経て認められるもの(14号)
11号・12号の区域や基準は、都道府県や市の条例で決まっています。
同じ市街化調整区域でも、自治体や場所によって建てられるものが大きく違うので、必ず窓口で確認しましょう。
既存宅地の制度は廃止されている
以前は、区域区分の前から宅地だった土地(既存宅地)なら、許可なしで建築できる制度がありました。
この制度は2000年の都市計画法の改正で廃止され、2001年5月18日から経過措置の期間(5年)を経て、なくなりました。
今は、以前「既存宅地」だった土地も、自治体の基準にあてはまるかどうかで判断されます。
基準の中で、区域区分の前から宅地だった土地を優遇している自治体もあります。
相続した家の建て替えと住む人の変更

相続した家に住み続けたり、建て替えたりできるかは、その家が建てられたときの経緯によって変わります。
| 家の種類 | 注意すること |
|---|---|
| 区域区分の前から建っている家 | 同じ用途・同程度の規模なら建て替えを認める基準を設けている自治体が多い |
| 許可を受けて建てた一般の住宅 | 許可を受けた用途のまま使うなら、建て替えが認められやすい |
| 農家住宅・分家住宅 | 建てた人の事情(農業をしているなど)を理由に許可された家。別の人が住むには用途変更の許可が必要になることがある |
| 許可を受けずに建てられた家 | 違反建築のおそれがある。建て替えや売却が難しい |
農家住宅などでも、一定の年数が過ぎた家や、相続人が住む場合には、用途変更を認める基準を設けている自治体があります。
家を建てたときの許可の内容は、自治体の開発許可の窓口で、許可の記録(開発登録簿など)を確認すると分かります。
市街化調整区域の家・土地は売れる?
市街化調整区域の家や土地も、売ることはできます。
| 売れやすさ | 土地の状態 |
|---|---|
| 比較的売りやすい | 条例の区域(34条11号など)で、誰でも住宅を建てられる土地 |
| 買い手が限られる | 今の家をそのまま使う・建て替えることはできるが、新築はできない土地 |
| 売るのが難しい | 建物を建てられない土地、違反建築がある土地、農地・山林 |
売る前に調べておくこと

- 市区町村の窓口で、その土地に家を建てられるか(建て替え・用途変更を含む)を確認する
- 家を建てたときの許可の内容を確認する
- 土地の地目(宅地・農地など)を登記事項証明書で確認する
- 水道・下水道・道路の状況を確認する
- 相続登記を済ませる(2024年4月から義務)
市街化調整区域の土地を扱った経験のある不動産会社でないと、正しく査定できないことがあります。
地元の不動産会社の仲介と、訳あり物件を扱う買取業者の両方で査定を取ると、価格の目安が分かりやすくなります。
農地の場合は農地法の許可も必要
土地が農地の場合、農地のまま売るには農業委員会の許可(農地法3条)、宅地などに変えて売るには都道府県知事などの許可(5条)が必要です。
市街化調整区域の農地は、転用の許可が下りにくいことが多く、買い手は農業をする人に限られがちです。
相続で農地を取得した場合は、許可は不要ですが、農業委員会への届出が必要です(農地法3条の3)。
相続放棄を考えている場合は、土地を売ったり、売る話を進めたりする前に、放棄するかどうかを決めてください(民法921条1号)。
相続した不動産の売却・買取の相談先(比較)
実家の状態によっては、仲介より買取のほうが早く手放せることがあります。
| 相談先 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
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住める状態の家・マンション・土地を仲介で売る | 複数の不動産会社の訪問査定を一度に申し込める |
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家・マンション・土地を仲介で売る | 対応エリアは公式サイトで確認 |
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共有持分・借地権・再建築不可・事故物件・長く空いた空き家 | 仲介で売りにくい物件向け |
住める状態の家は仲介の査定、傷みが大きい家や権利関係が複雑な家は買取の査定も取り、両方の金額を比べてから売り方を決めましょう。
売れないときの活用と手放し方
| 方法 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 今の家に住む・貸す | 許可の範囲で使い続ける | 貸す場合、用途の変更にあたらないか確認する |
| 資材置き場・駐車場として貸す | 建物を建てない使い方 | 農地は転用の許可が必要 |
| 隣の土地の持ち主に売る | 土地を広げたい隣地の人に声をかける | 境界の確定が必要になることがある |
| 買取業者に売る | 現状のまま買い取ってもらう | 価格は仲介より低くなりやすい |
| 相続土地国庫帰属制度 | 国に引き取ってもらう | 建物がある土地は対象外。負担金と審査がある |
相続土地国庫帰属制度は、建物を解体して更地にすれば申請できますが、解体費用と負担金がかかります。
制度の要件は相続土地国庫帰属制度とはで説明しています。
ほかの訳あり不動産の手放し方は相続した訳あり不動産の手放し方で解説しています。
相続税の評価
市街化調整区域の宅地も、ほかの宅地と同じように、路線価か、固定資産税評価額×倍率で評価します。
市街化調整区域は倍率地域になっていることが多く、評価倍率表で倍率を確認します。
路線価の調べ方は路線価とは?調べ方・計算で説明しています。
建物を建てられない雑種地などは、周りの状況に応じて宅地や農地の価額を基に評価し、建築の制限は減額(しんしゃく)で考慮します(国税庁 質疑応答事例)。
評価のしかたで税額が変わるので、土地が多い場合は相続税に詳しい税理士に相談しましょう。
固定資産税
市街化調整区域の土地は、原則として都市計画税がかかりません。
建物を建てにくいため、固定資産税評価額も市街化区域より低くなるのが一般的です。
遺産分割での注意点
市街化調整区域の土地は、売りにくく、評価額と実際に売れる価格がずれやすい財産です。
遺産分割で誰が引き継ぐか決めるときは、次の点に注意しましょう。
- 評価額だけで分け方を決めず、売れる見込みや管理の負担も考える
- 兄弟で共有にすると、売るときに全員の同意が必要になり、話がまとまりにくい
- 売って現金で分ける(換価分割)なら、売れるまでの管理費用の分担も決めておく
遺産分割協議書の書き方は遺産分割協議書の書き方で説明しています。
市街化調整区域の農地を相続したときの農業委員会への届出は相続した農地の手続きで説明しています。
よくある質問
市街化調整区域の家は相続できますか?
相続することはできます。
相続登記も、ほかの不動産と同じ手続きです。
問題になるのは、相続したあとに建て替えたり、売ったりするときです。
市街化調整区域の家を賃貸に出せますか?
一般の住宅として許可を受けた家なら、貸せることが多いです。
農家住宅など、建てた人の事情で許可された家は、別の人に貸すことが用途の変更にあたる場合があるので、事前に窓口で確認しましょう。
相続放棄すれば管理しなくてよいですか?
相続放棄をすると、土地を引き継ぐことはありません。
放棄の手続きは相続放棄とはで説明しています。
まとめ
監修者
行政書士(2018年11月開業)・社会保険労務士試験合格。遺産分割協議書の作成や相続人の調査(戸籍の収集)など、相続の書類づくりに携わっています。
このサイトでは、法務局・裁判所・国税庁・金融機関などが公表している一次資料で確かめた内容だけを書いています。詳しくは運営者情報をご覧ください。
参考資料:都市計画法(7条・29条・34条・43条)/都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律(平成12年法律第73号)/農地法(3条・3条の3・5条)/相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律/国税庁 質疑応答事例「市街化調整区域内にある雑種地の評価」/民法921条・940条(2026年9月30日確認)

