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認知症の親の家を売るには?成年後見・家庭裁判所の許可(居住用不動産処分)・家族信託を解説

認知症の親の家を売る 家族信託・成年後見
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親が施設に入り、空いた実家を売って介護費用にあてたいと考える方は多いでしょう。

ところが、親が認知症で判断能力が十分でないと、子が代わりに売ることはできません。

売るには、家庭裁判所の成年後見制度を使い、多くの場合は家庭裁判所の許可も必要になります。

この記事では、民法と家庭裁判所の案内をもとに、認知症の親の家を売る方法、手続きの流れ、必要書類、期間と費用を説明します。

先に結論
  • 判断能力がない人がした売買契約は無効。子が委任状を書かせて売ることもできない
  • すでに認知症が進んでいる場合は、家庭裁判所で成年後見人を選んでもらい、後見人が売る
  • 親が住んでいた家(施設に入って空いている家も含む)を売るには、さらに家庭裁判所の居住用不動産処分の許可が必要。許可なく売った契約は無効
  • 後見人の選任から売却まで、半年以上かかることもある。後見は売却後も続く
  • まだ判断能力があるうちなら、家族信託や任意後見で備えられる

この記事の監修:行政書士(2018年開業・社会保険労務士試験合格)。法務局・裁判所・国税庁などの一次資料で内容を確認しています。

認知症の親の家を子が売れない理由

認知症の親の家を子が代わりに売れない理由

不動産を売るには、売主本人が契約の内容を理解して、売ると決める必要があります。

民法では、契約をしたときに意思能力がなかった人の契約は無効とされています(民法3条の2)。

家の名義が親なら、売主は親です。

子が親の代わりに契約することも、親に委任状を書いてもらうこともできません。

委任をするにも、親に判断能力が必要だからです。

よくある考え 実際
家族なら代わりに売れる 家族でも代理権はない。親の判断能力が必要
委任状があれば売れる 判断能力がない人の委任は無効
実印と権利証があれば売れる 登記の手続きで本人の意思確認があり、売れない
軽い認知症でも売れない 契約の内容を理解できる程度なら、本人が売れることもある

認知症の診断があっても、症状が軽く、本人が内容を理解して判断できる場合は、本人が売主として売れることがあります。

判断能力があるかどうかは、不動産会社や登記を担当する司法書士が本人と面談して確認するのが一般的です。

3つの方法の比較

成年後見・任意後見・家族信託の比較

親の判断能力の状態によって、使える方法が違います。

方法 使える時期 家を売るときの手続き
成年後見(法定後見) 判断能力が不十分になったあと 家庭裁判所が選んだ後見人が売る。住んでいた家は家庭裁判所の許可が必要
任意後見 判断能力があるうちに契約し、低下したあとに始まる 任意後見人が契約で決めた範囲で売る
家族信託 判断能力があるうちに契約する 信託を受けた子が、契約で決めた範囲で売る

すでに認知症が進んでいる場合に使えるのは、成年後見だけです。

家族信託と任意後見は、判断能力があるうちに契約しておく必要があります。

成年後見人を選んでもらう

成年後見人は、判断能力が不十分な人に代わって、財産を管理したり契約をしたりする人です。

家庭裁判所に申し立てて選んでもらいます。

項目 内容
申立先 親の住所地の家庭裁判所
申し立てられる人 本人、配偶者、4親等内の親族、市区町村長など
費用 収入印紙800円、登記手数料2,600円、郵便切手。医師の鑑定が必要な場合は鑑定費用
期間 申立てから審判まで、多くは4か月以内

申立ての書類や流れは成年後見の申立てで詳しく説明しています。

後見人に誰が選ばれるか

申立てのときに、子などを後見人の候補者にすることができます。

ただし、誰を選ぶかは家庭裁判所が決めます。

財産が多い場合や、家族の間で意見が分かれている場合などは、弁護士や司法書士などの専門家が選ばれることがあります。

候補者が選ばれなかったことを理由に、申立てを取り下げるには家庭裁判所の許可が必要です。

後見人の報酬

専門家が後見人になると、親の財産から報酬を払います。

報酬の額は家庭裁判所が決めます。

東京家庭裁判所の目安では、基本報酬は月2万円程度で、管理する財産が多いと月3万〜6万円程度になります。

親族が後見人になる場合も、報酬を求めることはできます。

居住用不動産処分の許可

後見人が、親が住んでいた家を売るには、家庭裁判所の許可が必要です(民法859条の3)。

許可を得ないで結んだ契約は無効です。

ここでいう居住用不動産には、今住んでいる家だけでなく、病院や施設を出たときに住む予定の家も含まれます。

施設に入って空き家になった実家も、多くは居住用不動産にあたります。

売るだけでなく、抵当権の設定、人に貸すこと、取り壊すことも許可の対象です。

許可の判断で見られること

見られる点 内容の例
売る必要があるか 施設の費用や生活費にあてる必要があるか、ほかの預金で足りないか
本人が戻る見込み 本人が自宅に戻って生活する見込みがあるか
価格が適正か 査定価格と比べて安すぎないか
本人や親族の意向 本人の気持ちや、親族の意見

査定価格より低い価格で売る場合は、その理由の説明も求められます。

申立てに必要なもの

大阪家庭裁判所の案内では、売却の場合、主に次のものを求めています。

  • 申立書
  • 収入印紙800円分と郵便切手
  • 処分の必要性を説明する資料
  • 不動産の全部事項証明書(登記簿謄本)
  • 不動産の固定資産評価証明書
  • 不動産売買契約書(案)の写し
  • 不動産会社が作成した査定書

郵便切手の額や様式は、家庭裁判所ごとに違うので、申立先の案内を確認してください。

登記事項証明書と評価証明書の取り方は登記事項証明書と固定資産評価証明書で説明しています。

申立てのタイミング

許可の申立てには、売買契約書の案と査定書が必要です。

そのため、先に不動産会社に査定を頼み、買主と条件を話し合ってから申し立てます。

大阪家庭裁判所の案内では、取引が成立する一歩手前の段階で申し立て、引渡しの日は余裕を持って決めるよう求めています。

売買契約書には、家庭裁判所の許可が得られなければ契約の効力が生じないという条件をつけるのが一般的です。

住んでいなかった不動産を売るとき

親が住んだことのない土地や、貸していたアパートなどは、居住用不動産にあたりません。

この場合、家庭裁判所の許可はいりませんが、後見人は本人のために必要かどうかを考えて売ります。

後見監督人がいる場合は、その同意が必要です(民法864条)。

手続きの流れと期間

成年後見で親の家を売る流れ

  1. 親の主治医に診断書を書いてもらい、家庭裁判所に成年後見を申し立てる
  2. 家庭裁判所の審判で後見人が選ばれる(多くは申立てから4か月以内)
  3. 後見人が財産を調べ、家庭裁判所に財産目録などを出す
  4. 不動産会社に査定を頼み、売り出して買主を探す
  5. 買主と条件がまとまったら、居住用不動産処分の許可を申し立てる
  6. 許可が出たら売買契約の効力が生じ、決済と引渡しをする
  7. 売却代金は親の口座で管理し、家庭裁判所に報告する

買主が見つかるまでの期間は、家の状態や地域で大きく変わります。

申立てから引渡しまで、半年以上かかることもあると考えておきましょう。

売った代金は親の財産なので、親の施設の費用や生活費など、親のために使います。

後見は売却後も続く

いまの制度では、成年後見は、家を売ったあとも、親が亡くなるか判断能力が回復するまで続きます。

後見人は毎年、財産の状況を家庭裁判所に報告し、専門家の後見人には報酬がかかり続けます。

2026年6月に成立した改正民法では、後見・保佐・補助が「補助」に一本化されます。

あわせて、必要がなくなれば終わらせられるようになります。

改正法は、公布から2年6か月以内(2028年12月まで)に施行される予定で、それまではいまの制度が使われます。

売る前に知っておきたい税金

家を売って利益が出ると、親に譲渡所得の税金がかかることがあります。

親が住んでいた家なら、利益から最大3,000万円を差し引ける特例があります。

住まなくなった家は、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売るなどの条件があります。

特例が使えるかどうかや、税金の計算は、税理士や税務署に確認しましょう。

家を売るときの税金の全体は相続した不動産を売るときの税金でも説明しています。

不動産会社の選び方

後見人が売る場合も、売り方は通常の売却と同じで、仲介か買取を選べます。

売り方 向いている場合
仲介で売る 時間がかかってもよいので、相場に近い価格で売りたい
買取業者に売る 施設の費用が急ぎで必要で、早く現金化したい

家庭裁判所の許可には査定書が必要なので、複数の会社に査定を頼んで、価格の根拠をそろえておくと説明しやすくなります。

成年後見での売却に慣れた不動産会社なら、許可の申立てに合わせた契約の段取りも相談できます。

仲介手数料は不動産売却の仲介手数料で計算できます。

相続した不動産の売却・買取の相談先(比較)

実家の状態によっては、仲介より買取のほうが早く手放せることがあります。

相談先 向いているケース 注意点
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住める状態の家・マンション・土地を仲介で売る 複数の不動産会社の訪問査定を一度に申し込める
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住める状態の家は仲介の査定、傷みが大きい家や権利関係が複雑な家は買取の査定も取り、両方の金額を比べてから売り方を決めましょう。

まだ判断能力があるなら

親がまだ自分で判断できるうちなら、将来に備える方法があります。

方法 家を売るときのメリット 注意点
家族信託 契約の範囲で、子が家庭裁判所の許可なしに売れる 契約書の作成や登記の費用がかかる
任意後見 親が選んだ人が後見人になれる 任意後見監督人がつき、報酬がかかる
いまのうちに売る 親が売主として、自分で売れる 親が納得していることが前提

家族信託は家族信託とは、任意後見は任意後見とはで説明しています。

介護施設の種類と費用、費用を何年払えるかは介護施設の種類と費用で説明しています。

親が判断できるうちに、家を売って借りて住み続ける方法もあります(リースバックとは?仕組み・デメリット・家賃と売却額の比べ方)。

親が元気なうちに自宅で資金を作る方法はリバースモーゲージとはも参考にしてください。

親が元気なうちの実家じまいは実家じまいの進め方で説明しています。

よくある質問

親の預金も下ろせなくなりますか?

銀行は、預金者の判断能力が低下したことを知ると、本人以外による引き出しを断ることがあります。

家族が代わりに大きな額を引き出すには、成年後見人が選ばれていることなどを求められるのが一般的です。

対応は銀行ごとに違うので、取引のある銀行に確認しましょう。

親の家を売らずに、空き家のまま置いておくとどうなりますか?

固定資産税や管理の費用がかかり続けます。

傷みが進むと、売るときの価格が下がることもあります。

空き家の費用は相続した家の固定資産税も参考にしてください。

親が亡くなるまで待って、相続してから売ってはいけませんか?

待つこともできます。

相続したあとは、相続人が遺産分割をして相続登記をすれば、相続人が売れます。

ただし、施設の費用が必要で、親の預金で足りない場合は、待てないこともあります。

相続した家の売り方は相続した実家は売る?残す?で説明しています。

後見人になった子が、親の家を自分で買えますか?

後見人と本人の利益がぶつかる取引になるため、後見人がそのまま買うことはできません。

家庭裁判所で特別代理人を選んでもらうなどの手続きが必要で、後見監督人がいる場合は監督人が本人を代理します。

まとめ

  • 判断能力がない親の売買契約は無効で、子が代わりに売ることも、委任状で売ることもできない
  • すでに認知症が進んでいる場合は、家庭裁判所で成年後見人を選んでもらい、後見人が売る
  • 親が住んでいた家(施設に入って空いた家を含む)は、家庭裁判所の居住用不動産処分の許可が必要
  • 許可の申立てには売買契約書の案と査定書がいるため、先に査定と買主探しを進める
  • 後見は売却後も続く。判断能力があるうちなら、家族信託や任意後見で備えられる

監修者

行政書士(2018年11月開業)・社会保険労務士試験合格。遺産分割協議書の作成や相続人の調査(戸籍の収集)など、相続の書類づくりに携わっています。

このサイトでは、法務局・裁判所・国税庁・金融機関などが公表している一次資料で確かめた内容だけを書いています。詳しくは運営者情報をご覧ください。

参考資料:民法3条の2・826条・859条の3・860条・864条/大阪家庭裁判所「居住用不動産処分許可の申立てについて」/裁判所「後見開始」/東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」/法務省「民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」(2026年10月2日確認)

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