親が亡くなると、親の名義になっているお墓の手続きも必要になります。
お墓は預金や家とは違い、相続ではなく「祭祀を主宰する人」が引き継ぐものです。
そのうえで、墓地の管理者(自治体・寺院・霊園)に名義変更(承継)の手続きをします。
この記事では、お墓を引き継ぐ人の決め方、名義変更の流れと必要書類、費用の例を、民法と自治体の公式案内をもとに整理します。
引き継ぐ人がいない場合や、お墓を手放したい場合の選択肢も説明します。
手続きの準備に使えるチェックリストはWordで用意しました。
- お墓(墳墓)は遺産分割の対象ではなく、祖先の祭祀を主宰する人が引き継ぐ(民法897条)
- 引き継ぐ人は、故人の指定→慣習→家庭裁判所の順で決まる
- 名義変更は、墓地の管理者(自治体の霊園・寺院・民営霊園)に申請する。必要書類と手数料は管理者ごとに違う
- 公営霊園の例:名古屋市の八事霊園・愛宕霊園は手数料1,100円、北九州市の市営霊園は300円
- 墓地や墓石は相続税がかからない(相続税法12条1項2号)。相続放棄をしてもお墓は引き継げる
お墓は誰が引き継ぐのか

民法は、系譜・祭具・墳墓の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継すると定めています(民法897条1項)。
墳墓とは、お墓のことです。
| 決め方 | 内容 |
|---|---|
| 1 故人の指定 | 遺言や生前の意思表示で指定された人が引き継ぐ(897条1項ただし書) |
| 2 慣習 | 指定がなければ、その地域や家の慣習に従う |
| 3 家庭裁判所 | 慣習が明らかでないときは、家庭裁判所が定める(897条2項) |
お墓を引き継ぐ人(祭祀承継者)は、相続人でなくてもかまいません。
また、お墓は遺産分割の対象ではないので、お墓を引き継いだからといって、ほかの遺産の取り分が当然に変わるわけではありません。
仏壇や位牌の引き継ぎも同じ考え方です(実家の仏壇・位牌はどうする?)。
遺言で祭祀承継者を指定しておく
自分の死後にお墓を誰に任せたいかが決まっている場合は、遺言で指定しておくことができます。
第〇条 遺言者は、祖先の祭祀を主宰すべき者として、長女〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)を指定する。
2 遺言者は、前項の者に、〇〇霊園〇区〇番の墓地使用権及び墓石を承継させる。
指定は遺言でなくてもかまいませんが、書面に残しておくと、あとで家族がもめにくくなります。
遺言の書き方は自筆証書遺言の書き方と文例で説明しています。
家族で意見が分かれたとき
誰がお墓を引き継ぐかで親族の意見がまとまらず、慣習でも決められないときは、家庭裁判所の調停や審判で決めることになります。
話し合いがこじれそうな場合は、早めに弁護士に相談してください。
墓地の管理者の規則も確認する
墓地の管理者は、使用規則で名義変更できる人の範囲を決めていることがあります。
名古屋市の八事霊園・愛宕霊園では、名義変更(承継)できるのは原則として、名義人の親族と、祭祀を主宰する者として家庭裁判所に定められた人とされています。
北九州市の市営霊園は、2親等以内の親族(祖父母、兄弟姉妹、孫まで)が祭祀を承継することが望ましいと案内しています。
引き継ぐ人を決める前に、墓地の管理者に条件を確かめておきましょう。
名義変更(承継)の流れ

- 墓地使用許可証(永代使用承諾書など)を探し、墓地の管理者と名義人を確認する
- 家族で、お墓を引き継ぐ人を決める
- 墓地の管理者に連絡し、申請書と必要書類を確認する
- 戸籍謄本などの書類を集め、申請する
- 手数料を払い、新しい使用許可証を受け取る
- 管理料の支払い方法や、連絡先を新しい名義人に変える
名古屋市の八事霊園・愛宕霊園では、書類を出してから2週間ほどで名義変更のお知らせのはがきが届き、手数料1,100円を納めると新しい墓地使用許可証が交付される流れです。
墓地の種類を確かめる
名義変更の申請先は、墓地の種類によって違います。
| 墓地の種類 | 申請先 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 公営墓地(市町村の霊園など) | 市区町村の担当課や霊園の管理事務所 | 使用許可証の発行者が自治体になっている |
| 寺院墓地 | お寺(住職) | お寺の境内や、お寺が管理する墓地にある |
| 民営霊園 | 霊園の管理事務所 | 使用承諾書や管理料の請求書に霊園の名前がある |
管理料の請求書や領収書、納骨したときの書類も手がかりになります。
墓地使用許可証が見つからないとき
使用許可証は、納骨や墓石の工事の申請でも使う大切な書類です。
見つからない場合も、管理者によっては再交付の手続きや、紛失届で対応できることがあります。
名古屋市の案内では、名義変更の必要書類として使用許可証を挙げつつ、紛失した場合は不要としています。
実家の片付けの前に、仏壇や金庫、書類箱の中を確認しておきましょう(遺品整理はいつから?)。
必要書類と費用の例
必要書類と手数料は、墓地の管理者ごとに違います。
ここでは、自治体が公式に案内している例を紹介します。
| 項目 | 名古屋市(八事霊園・愛宕霊園) | 北九州市(市営霊園) |
|---|---|---|
| 申請書 | 墓地使用承継申請書・誓約書 | 霊園使用承継申請書兼許可証書換申請書 |
| 故人の戸籍 | 死亡が記載された戸籍または除籍抄本(謄本) | 現使用者と承継者・ほかの権利者との続柄が分かる戸籍(除籍・改製原)謄本 |
| 承継する人の書類 | 戸籍抄本(謄本)・住民票・印鑑登録証明書 | 住民票(本籍記載) |
| そのほか | 墓地使用許可証(紛失した場合は不要) | 霊園使用許可証・誓約書及び同意書・認印 |
| 手数料 | 1,100円 | 300円 |
名古屋市の表は、名義人が亡くなり子が承継する「よくあるケース」の書類です。
続柄によっては、より近い親族の同意書が必要になる場合があると案内されています。
戸籍の集め方は相続の戸籍謄本の集め方で説明しています。
寺院墓地・民営霊園の場合
寺院墓地や民営霊園は、それぞれの規則で手続きが決まっています。
寺院墓地では、檀家としての関係を引き継ぐことも含めて、住職と相談しながら進めるのが一般的です。
手数料や必要書類は、寺院や霊園の管理事務所に直接確認してください。
名義が故人のままだと困ること
お墓の遺骨を別のお墓に移す(改葬する)ときは、市区町村長の改葬許可が必要です。
その申請では、墓地使用者以外の人が申請する場合、墓地使用者の改葬についての承諾書を添付することになっています(墓地、埋葬等に関する法律施行規則2条2項2号)。
名義人が亡くなったままだと、誰が承諾するのかで手続きが止まることがあります。
墓じまいを考えている場合も、先に名義変更を済ませておくと進めやすくなります。
手続きの期限
名義変更の期限は、法律では決まっていません。
名義が故人のままだと、納骨や墓石の工事の申請、墓じまいの手続きで名義人の確認が必要になったときに困ることがあるので、早めに済ませましょう。
名義変更と一緒に進めること
- 納骨の予定を管理者に伝える(納骨には火葬許可証などが必要)
- 墓誌や墓石に故人の名前を彫る場合は、石材店に依頼し、管理者に工事の届出が必要か確認する
- 寺院墓地なら、法要や檀家としての付き合いをどうするかを住職と相談する
- 管理料の引き落とし口座や、請求書の送り先を変える
- 家族に、お墓の場所・区画番号・管理者の連絡先を共有する
墓地や納骨堂の管理者は、火葬許可証などを受け取った後でなければ、遺骨の埋蔵・収蔵をさせてはならないとされています(墓地、埋葬等に関する法律14条)。
火葬のときに返してもらった許可証は、納骨まで大切に保管しておきましょう。
お墓にかかるお金と税金
お墓を引き継ぐと、毎年の管理料を払う立場になります。
名古屋市は、墓地管理料を霊園内の通路や共同施設の維持管理に使う経費として説明しています。
管理料の支払いが滞ると、墓地の管理者から連絡が来ることがあるので、口座振替などの手続きも名義変更とあわせて変更しましょう。
名義人になると何をするのか
名古屋市は、墓地使用者(名義人)になるとできることと、対応することを次のように案内しています。
- 遺骨の埋蔵(納骨)や移動(改葬)ができる
- 年間の墓地管理料を払う
- 墓地と墓石などについて、名義人の負担で清掃や修繕などの管理をする
- 適切な管理が行われない場合、条例に基づき墓地使用権が取り消されることがある
墓じまいをする場合の墓石の撤去工事の費用も、名義人の負担とされています。
寺院墓地や民営霊園の場合も、名義人の負担や責任は使用規則で決まっているので、引き継ぐ前に確認しておきましょう。
お墓は相続税がかからない
墓所・霊びょう・祭具など(お墓、仏壇、仏具など)は、相続税の非課税財産です(相続税法12条1項2号)。
具体的な扱いは税理士か税務署に確認してください。
相続放棄をしてもお墓は引き継げる
お墓は相続財産ではなく祭祀財産なので、相続放棄をした人でも祭祀承継者としてお墓を引き継ぐことができます。
相続放棄の期限や注意点は相続放棄とは?で説明しています。
引き継ぐ人がいない・お墓を手放したいとき

遠方に住んでいて管理できない、跡を継ぐ人がいないといった場合は、次のような方法があります。
| 方法 | 内容 | 詳しい記事 |
|---|---|---|
| 墓じまい | 遺骨を取り出して改葬し、墓石を撤去して墓地を返す | 墓じまいの方法と手順 |
| 永代供養・樹木葬 | お寺や霊園が管理・供養するお墓に移す | 永代供養と樹木葬の違い |
| 近くに建て直す | 住まいの近くに新しくお墓を建て、遺骨を移す | お墓を建てる費用と流れ |
遺骨を別のお墓に移すには、今のお墓がある市区町村の改葬許可が必要です(墓地、埋葬等に関する法律5条)。
引き継ぐ人がいないまま放置されると
縁故者がいなくなったお墓(無縁墳墓)は、墓地の管理者が改葬の手続きをとることがあります。
その場合、管理者は、墓地使用者や縁故者に1年以内に申し出るよう官報に掲載します。
あわせて、お墓の見やすい場所に立札を1年間掲示するなどの手続きを経ます(墓地、埋葬等に関する法律施行規則3条)。
知らないうちに先祖のお墓が整理されてしまうことを防ぐためにも、名義変更をして管理者に連絡先を伝えておきましょう。
墓石の工事や墓じまいの見積もり
名義変更のあと、墓石の修理や文字の追加、墓じまいを考える人もいます。
石材店によって見積もりに差が出ることがあるので、同じ内容で複数の石材店から見積もりを取って比べましょう。
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お墓の名義変更チェックリスト(Word・無料)
名義変更の準備に使えるチェックリストをWordで用意しました。
無料ダウンロード
- 墓地の情報(管理者・区画番号・使用許可証の有無・管理料)
- 引き継ぐ人と決め方(故人の指定・慣習・話し合い)
- 管理者に確認すること(申請書・必要書類・手数料・期限)
- 集める書類(戸籍・住民票・印鑑登録証明書・同意書)
- 名義変更のあとにやること(管理料の口座・連絡先・お寺への連絡)
よくある質問
お墓の名義変更は司法書士に頼むものですか?
お墓は登記するものではないので、名義変更は墓地の管理者への申請です。
書類をそろえれば、引き継ぐ人が自分で手続きできます。
兄弟で共同の名義にできますか?
共同の名義にできるかどうかは、墓地の使用規則によります。
兄弟で費用や管理を分担したい場合も、名義人を誰にするかは墓地の管理者に相談してください。
嫁いだ娘でもお墓を引き継げますか?
民法上、祭祀承継者は氏や性別で限られていません。
名義変更をしないで納骨できますか?
管理者によっては、納骨の届出の際に名義人の申請や承諾が必要になります。
名義人が亡くなっている場合は、名義変更を先に求められることがあるので、四十九日の納骨の予定がある場合は早めに管理者に連絡しましょう(法要の準備)。
名義人が生きているうちに名義変更できますか?
管理者によっては認めていることがあります。
名古屋市の八事霊園・愛宕霊園では、名義人の健康状態や生活環境から墓地の適正な管理ができないと認められる場合に、生前の承継を認めることがあると案内しています。
「気持ちが変わったから」といった理由だけでは承継理由にならないともされているので、管理者に相談してください。
まとめ
まずは墓地使用許可証を探し、墓地の管理者に名義変更の方法を問い合わせるところから始めてください。
参考にした資料
- 民法897条、相続税法12条1項2号、墓地、埋葬等に関する法律5条・14条、同法施行規則2条・3条(e-Gov法令検索)
- 名古屋市「八事霊園・愛宕霊園 よくある質問」(墓地の名義変更(承継)について)
- 北九州市「霊園の各種手続き」(使用者の死亡等により名義変更するとき)

