相続放棄をするには、家庭裁判所に「相続放棄申述書」を出す必要があります。
「どこで書式を手に入れるの?」「何を書けばいい?」「戸籍は何を集めるの?」と迷う方は多いでしょう。
この記事では、裁判所の手続案内と、2026年に裁判所が公開している申述書の書式・記入例をもとに説明します。
申述書の書き方を欄ごとに見たうえで、相続人の立場ごとの必要書類、費用、提出後の流れまで整理します。
- 申述書は裁判所のウェブサイトからダウンロードできる(PDF・Word)
- 提出先は亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所。郵送でも出せる
- 費用は収入印紙800円(1人につき)+連絡用の郵便切手
- 必要な戸籍は、放棄する人が配偶者・子か、親か、兄弟姉妹かで変わる
- 期限は、相続の開始を知った時から3か月以内
相続放棄申述書の入手方法

相続放棄申述書は、裁判所のウェブサイトで公開されています。
「相続の放棄の申述書(成人)」のページから、PDFとWordの書式、記入例をダウンロードできます。
未成年者が放棄する場合は、「相続の放棄の申述書(未成年者)」の書式を使います。
家庭裁判所の窓口でも、書式を受け取れます。
| 入手方法 | 内容 |
|---|---|
| 裁判所のウェブサイト | PDF・Wordの書式と記入例(成人用・未成年者用) |
| 家庭裁判所の窓口 | 書式を受け取れる。書き方の相談はできても、代わりに書いてはもらえない |
2026年の書式は2ページ
現在、裁判所のウェブサイトで公開されている書式は、A4で2ページです。
1ページ目に申述人と亡くなった方の情報、2ページ目に申述の趣旨と理由を書きます。
以前の書式にあった「相続財産の概略」を書く欄はありません。
古い記入例を見て書くと欄の位置が合わないので、最新の書式を使いましょう。
相続放棄申述書の書き方(1ページ目)

裁判所の記入例をもとに、欄ごとの書き方を説明します。
書くのは太枠の中だけです。
番号を選ぶ欄は、当てはまる番号を〇で囲みます。
収入印紙の欄
右上の欄に、収入印紙800円分を貼ります。
貼った印紙には、押印しないでください。
収入印紙は、郵便局やコンビニなどで買えます。
提出先・日付・署名欄
| 欄 | 書くこと |
|---|---|
| 〇〇家庭裁判所 | 提出する家庭裁判所の名前 |
| 令和〇年〇月〇日 | 申述書を作った日 |
| 申述人の記名押印 | 放棄する人の氏名と押印。未成年者などは法定代理人 |
添付書類の欄
添付する書類にチェックを入れます。
戸籍謄本は、添付する通数の合計を書きます。
書式には「戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本」と「被相続人の住民票除票又は戸籍附票」の欄があります。
申述人の欄
| 欄 | 書くこと |
|---|---|
| 本籍 | 放棄する人の本籍(戸籍謄本のとおり) |
| 住所・電話 | 裁判所から連絡がとれる住所と、平日の日中につながる番号(携帯電話でもよい) |
| 氏名・生年月日・職業 | 放棄する人の氏名(フリガナ)、生年月日と年齢、職業 |
| 被相続人との関係 | 子・孫・配偶者・直系尊属・兄弟姉妹・おいめい・その他から選ぶ |
住所は、裁判所から照会書が届く場所です。
正確に書きましょう。
法定代理人の欄
放棄する人が未成年者や成年被後見人の場合に、親権者や後見人の情報を書きます。
成人が自分で申述するなら、空欄のままです。
被相続人の欄
亡くなった方の本籍、最後の住所、氏名、亡くなった日を書きます。
最後の住所は、住民票除票や戸籍附票のとおりに書きます。
相続放棄申述書の書き方(2ページ目)

申述の趣旨
「相続の放棄をする。」とあらかじめ印刷されているので、書き足すことはありません。
相続の開始を知った日
相続の開始を知った日を書き、その日にあたる理由を選びます。
| 番号 | 選ぶ場面 |
|---|---|
| 1 被相続人死亡の当日 | 亡くなった日に知った |
| 2 死亡の通知をうけた日 | 疎遠で、あとから死亡を知らされた |
| 3 先順位者の相続放棄を知った日 | 子の放棄で、親や兄弟姉妹が相続人になった |
| 4 その他 | 上のどれにも当たらない(理由を具体的に書く) |
3か月の期限は、この「知った日」から数えます。
亡くなった日から3か月を過ぎていても、知った日が遅ければ申述できることがあります。
放棄の理由
当てはまる理由を選んで〇で囲みます。
- 被相続人から生前に贈与を受けている
- 生活が安定している
- 遺産が少ない
- 遺産を分散させたくない
- 債務超過のため
- その他(具体的に書く)
借金が多いなら「5 債務超過のため」、ほかの相続人に遺産をまとめたいなら「4」などを選びます。
どれにも当たらないときは「6 その他」を選び、かっこ内に理由を書きます。
記入例:父の借金を理由に子が放棄する場合
よくあるケースで、各欄に何を書くかを整理します(架空の例です)。
| 欄 | 記入する内容 |
|---|---|
| 提出先 | 父の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
| 添付書類 | 戸籍謄本にチェック(子の戸籍と、父の死亡の記載のある戸籍の合計通数)、父の住民票除票にチェック |
| 申述人 | 子本人の本籍・住所・電話・氏名・生年月日・職業 |
| 被相続人との関係 | 「1 子」を〇で囲む |
| 法定代理人 | 空欄 |
| 被相続人 | 父の本籍・最後の住所・氏名・亡くなった日 |
| 相続の開始を知った日 | 亡くなった日を書き、「1 被相続人死亡の当日」を〇で囲む |
| 放棄の理由 | 「5 債務超過のため」を〇で囲む |
子が2人とも放棄するなら、それぞれが申述書を作ります。
父の戸籍は1通を2人で共用できます。
相続放棄の必要書類
裁判所の手続案内では、申述書のほかに、次の書類を添付します。
必要な戸籍は、放棄する人が亡くなった方とどういう関係かで変わります。
全員に共通する書類
- 被相続人(亡くなった方)の住民票除票または戸籍附票
- 申述人(放棄する人)の戸籍謄本
立場ごとに追加する書類

| 放棄する人 | 追加する戸籍 |
|---|---|
| 配偶者 | 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本 |
| 子 | 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本 |
| 孫(代襲相続人) | 上に加えて、亡くなっている親(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍謄本 |
| 父母・祖父母 | 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、亡くなった子がいればその出生から死亡までの戸籍謄本など |
| 兄弟姉妹 | 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、亡くなった子の出生から死亡までの戸籍謄本、父母・祖父母の死亡の記載のある戸籍謄本 |
| おい・めい | 兄弟姉妹の書類に加えて、亡くなっている兄弟姉妹(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍謄本 |
父母や兄弟姉妹が放棄する場合は、先に相続人になる人がいないことを示すため、集める戸籍が多くなります。
先に放棄した人が提出済みの書類は、添付しなくてかまいません。
書類をそろえるときのポイント
- 同じ書類は1通で足りる
- 申述前に手に入らない戸籍は、申述後に追加で出してもよい
- 戸籍の代わりに「法定相続情報一覧図の写し」を出せる場合がある(申述先の家庭裁判所に確認)
- 審理に必要なら、追加の書類を求められることがある
戸籍の集め方は法定相続情報一覧図の作り方と必要書類で説明しています。
戸籍は近くの役所でまとめて取れる
2024年3月1日から、戸籍の広域交付が始まりました。
本人・配偶者・父母や祖父母・子や孫の戸籍は、本籍地以外の市区町村の窓口でもまとめて請求できます。
費用と提出先
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 収入印紙 | 800円(申述人1人につき) |
| 郵便切手 | 裁判所ごとに金額が違う。申述先の家庭裁判所のページで確認 |
| 戸籍謄本など | 戸籍謄本1通450円、除籍・改製原戸籍謄本1通750円(市区町村の窓口) |
| 提出先 | 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所 |
郵便切手の代わりに、保管金として納付することもできます。
家庭裁判所には、窓口に持参するか、郵送で提出します。
提出先の家庭裁判所は、裁判所の「申立書提出先一覧」で調べられます。
提出してからの流れ

申述書を出すと、家庭裁判所が内容を確認し、放棄を受理するかを判断します。
| 順番 | 内容 |
|---|---|
| 1. 提出 | 申述書と添付書類を家庭裁判所に出す |
| 2. 照会 | 裁判所から照会書(質問の書面)が届くことがある。回答して返送する |
| 3. 受理 | 放棄が受理されると「相続放棄申述受理通知書」が届く |
| 4. 証明書 | 必要なら「相続放棄申述受理証明書」を申請する |
裁判所は、判断のために書面で照会したり、直接事情を聞いたりすることがあると案内しています。
照会や呼出しには、必ず応じましょう。
受理通知書と受理証明書の違い
受理通知書は、放棄が受理されたことを本人に知らせる書面です。
債権者や金融機関、ほかの相続人の登記手続きなどで放棄を証明するには、受理証明書を求められることがあります。
受理証明書は、家庭裁判所に申請して交付を受けます。
受理証明書の申請方法
裁判所の案内では、受理証明書は次の方法で申請します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請先 | 相続放棄を受理した家庭裁判所 |
| 申請書 | 裁判所の「書類交付申請書」(Excel)に記入 |
| 手数料 | 1通につき収入印紙150円 |
| 郵送の場合 | 返信用の郵便切手を添える |
| 窓口の場合 | 印鑑と、受理通知書や運転免許証など本人確認できるものを持参 |
債権者や金融機関に出す場合は、必要な通数をまとめて申請しておくと手間が減ります。
ほかの相続人が登記などで使うために、放棄した人の受理証明書を求められることもあります。
郵送で出すときの手順
- 申述書に収入印紙を貼り、署名・押印する
- 添付書類をそろえ、申述書と一緒にまとめる
- 申述先の家庭裁判所が指定する郵便切手を同封する
- 控えとして、申述書のコピーを手元に残す
- 書留など、届いたことがわかる方法で送る
郵便切手の金額や組み合わせは裁判所ごとに違うので、発送前に確認しましょう。
放棄したあとにやること
- 次の順位の相続人に、放棄したことを伝える(その人の3か月の期限が始まるため)
- 債権者から請求が来たら、受理通知書の写しや受理証明書で放棄を伝える
- 亡くなった方の財産には手を付けない
放棄した人でも、放棄の時に相続財産を現に占有していれば、次の人に引き渡すまで保存の義務があります(民法940条)。
書き方で気をつけること
3か月の期限に間に合わないとき
財産の調査に時間がかかり、3か月では判断できない場合があります。
その場合は、期限が来る前に家庭裁判所へ「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てます。
期限の考え方は相続放棄とはで説明しています。
戸籍がそろう前でも出せる
申述前に手に入らない戸籍は、申述後に追加で出してもよいと裁判所は案内しています。
期限が迫っているなら、そろった書類で先に申述しましょう。
家族全員で放棄する場合
相続放棄は、放棄する人が1人ずつ申述します。
複数人で放棄するなら、申述書も収入印紙も人数分必要です。
子が全員放棄すると、次は父母、その次は兄弟姉妹が相続人になります。
相続人の順位は法定相続人の範囲と順位で確認できます。
未成年者が放棄する場合
未成年者の放棄は、親権者などの法定代理人が代わりに申述します。
親も相続人で、子だけが放棄する場合は、特別代理人の選任が必要になることがあります。
放棄を考える理由が「実家」なら
相続放棄をすると、借金だけでなく、預貯金など、すべての財産を受け取れなくなります。
放棄を考える理由が「売れない実家や土地」だけなら、ほかの手放し方もあります。
- 相続して売る(訳あり物件の買取業者も含めて比べる)
- 相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう
手放し方の比較は相続した訳あり不動産の手放し方で説明しています。
注意:相続財産を売ると、相続を承認したものとみなされ、あとから相続放棄はできなくなります(民法921条1号)。
買取の査定は、放棄しないと決めてから、売り方を比べるために使ってください。
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相続して売る道を選ぶなら、実家や土地がいくらで売れるのか、買取の査定で比べられます。
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全員が放棄した場合の手続きは相続財産清算人とはを参考にしてください。
相続放棄が受理されたあと、銀行や法務局に出す証明書の取り方は相続放棄申述受理証明書の取り方で説明しています。
相続放棄ではなく、財産の範囲内でだけ借金を払う方法は限定承認とはで説明しています。
よくある質問
相続放棄申述書は自分で書けますか?
書けます。裁判所の記入例に沿って書けば、多くの場合は本人だけで出せます。
戸籍を集めるのが難しい、期限が迫っているなどの場合は、司法書士や弁護士に相談しましょう。
申述書はパソコンで作ってもよいですか?
裁判所はWord形式の書式も公開しているので、パソコンで作れます。
記名押印の欄には、押印が必要です。
提出してから受理まで、どれくらいかかりますか?
裁判所や照会の有無によって違います。
照会書が届いたら、早めに回答して返送しましょう。
受理されたあと、取り消せますか?
一度受理された相続放棄は、原則として撤回できません(民法919条1項)。
だまされたり脅されたりして放棄したなど、限られた場合に取り消せるだけです。
財産の一覧を付ける必要はありますか?
2026年時点の書式には財産の概略を書く欄がなく、裁判所の案内でも財産の一覧は添付書類になっていません。
ただし、審理のために追加の書類を求められることはあります。
まとめ
監修者
行政書士(2018年11月開業)・社会保険労務士試験合格。遺産分割協議書の作成や相続人の調査(戸籍の収集)など、相続の書類づくりに携わっています。
このサイトでは、法務局・裁判所・国税庁・金融機関などが公表している一次資料で確かめた内容だけを書いています。詳しくは運営者情報をご覧ください。
参考資料:裁判所「相続の放棄の申述」(手続案内)、「相続の放棄の申述書(成人)」書式・記入例(2026年版)/法務省「戸籍証明書等の広域交付」/民法915条・919条(2026年9月26日確認)

