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子どものいない夫婦の相続|兄弟姉妹が相続人に・配偶者に全財産を残す遺言

子どものいない夫婦の相続 相続人・戸籍
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「子どもがいない夫婦なら、夫が亡くなったら財産は全部妻のもの」

そう思っている方は少なくありません。

しかし実際には、子どものいない夫婦の相続では、亡くなった方の親や兄弟姉妹も相続人になります。

この記事では、民法のルールに沿って、子どものいない夫婦の相続人と相続分、よくあるトラブル、配偶者に全財産を残すための遺言書の書き方を、わかりやすく説明します。

先に結論
  • 子どもがいない場合、配偶者と一緒に親(親がいなければ兄弟姉妹)が相続人になる
  • 相続分は、親と一緒なら配偶者2/3、兄弟姉妹と一緒なら配偶者3/4
  • 兄弟姉妹には遺留分がない。遺言書で「全財産を妻に」と書けば、妻がすべて受け継げる
  • 夫婦それぞれが遺言書を書いておくのが基本(1枚の紙に2人で書く共同遺言は無効)

この記事の監修:行政書士(2018年開業・社会保険労務士試験合格)。

法務局・裁判所・国税庁などの一次資料で内容を確認しています。

子どものいない夫婦の相続人

子どものいない夫婦の相続人と相続分

配偶者は、常に相続人になります。

そのうえで、子どもがいない場合は、次の順番で配偶者と一緒に相続人になる人が決まります。

ケース 相続人 法定相続分
亡くなった方の親(または祖父母)が生きている 配偶者と親 配偶者2/3、親1/3(2人なら各1/6)
親も祖父母も亡くなっていて、兄弟姉妹がいる 配偶者と兄弟姉妹 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4(人数で分ける)
兄弟姉妹も先に亡くなっていて、甥・姪がいる 配偶者と甥・姪(代襲相続) 配偶者3/4、甥・姪は亡くなった兄弟姉妹の分を分ける
親・兄弟姉妹・甥姪がいない 配偶者のみ 配偶者がすべて

相続人の順位の全体は法定相続人の範囲と順位で解説しています。

計算例:夫が亡くなり、妻と夫の兄・妹がいる場合

夫の親はすでに亡くなっていて、妻と、夫の兄・妹が相続人になるケースです。

相続人 法定相続分 遺産3,000万円の場合
妻 3/4 2,250万円
夫の兄 1/8 375万円
夫の妹 1/8 375万円

遺言書がなければ、妻は夫の兄・妹と遺産分割協議をする必要があります。

甥・姪まで相続人になることも

夫の兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、その子(夫の甥・姪)が代わりに相続人になります。

甥・姪の子は相続人になりません。詳しくは代襲相続とはで解説しています。

子どものいない夫婦の相続で起きやすい問題

子どものいない夫婦の相続で起きやすい問題

義理の兄弟姉妹と遺産分割協議をすることになる

遺言書がないと、妻は、夫の兄弟姉妹や甥・姪と、遺産の分け方を話し合う必要があります。

普段付き合いのない義理の親族との話し合いは、精神的な負担が大きくなりがちです。

兄弟姉妹が亡くなって甥・姪が相続人になっていると、相続人が10人を超えることもあります。

自宅の名義変更に全員の実印が必要になる

夫名義の自宅を妻の名義にするには、遺言書がなければ、相続人全員が遺産分割協議書に実印を押し、印鑑証明書を出す必要があります。

1人でも協力してくれない相続人がいると、名義変更が進みません。

預金の払い戻しも、原則として相続人全員の協力が必要です。

法定相続分を求められると、自宅を手放すことも

遺産の大部分が自宅で、預金が少ない場合、兄弟姉妹から法定相続分のお金を求められると、妻が払えないことがあります。

その結果、自宅を売ってお金を分けなければならなくなるおそれもあります。

戸籍集めが大変

兄弟姉妹が相続人になる場合は、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍に加えて、亡くなった方の両親の出生から死亡までの戸籍も必要です。

両親に、ほかの子(異父・異母の兄弟姉妹)がいないかを確認するためです。

甥・姪が相続人になる場合は、亡くなった兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍も必要になります。

集めた戸籍は、法定相続情報一覧図にまとめると、その後の手続きが楽になります。

作り方は法定相続情報一覧図の作り方で解説しています。

遺言書がないときの進め方

遺言書がない場合、配偶者は次の順番で手続きを進めます。

  • STEP 1
    戸籍を集めて相続人を確定する
    亡くなった方と両親の出生から死亡までの戸籍を集め、兄弟姉妹・甥姪を全員確認する
  • STEP 2
    財産の一覧を作る
    預金・不動産・株式などを調べ、財産目録にまとめる
  • STEP 3
    相続人に連絡する
    財産目録と分け方の案を、手紙などで全員に送る
  • STEP 4
    遺産分割協議書を作る
    全員の合意ができたら協議書を作り、郵送で署名・実印の押印と印鑑証明書をもらう
  • STEP 5
    名義変更・解約をする
    協議書と戸籍などで、相続登記や預金の払い戻しをする

協議書の書き方と雛形は遺産分割協議書の書き方|Word雛形4パターンにあります。

話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を使えます。詳しくは遺産分割調停とはで解説しています。

兄弟姉妹が相続人になる場合の相続税

兄弟姉妹が相続人になる場合、相続税の基礎控除の「法定相続人の数」には兄弟姉妹も含まれます。

たとえば、相続人が妻と夫の兄・妹の3人なら、基礎控除は3,000万円+600万円×3人=4,800万円です。

ただし、兄弟姉妹や甥姪が財産を受け取ると、相続税が2割加算されます。

対策は「遺言書」が基本

子どものいない夫婦の遺留分

子どものいない夫婦の相続対策で、最も効果が大きいのが遺言書です。

兄弟姉妹には遺留分がない

遺留分は、一定の相続人に保障された最低限の取り分です。

しかし、兄弟姉妹(と代襲相続人の甥・姪)には、遺留分がありません。

そのため、「全財産を妻に相続させる」という遺言書があれば、兄弟姉妹は遺産を受け取れず、妻がすべてを受け継げます。

遺言書があれば、兄弟姉妹と遺産分割協議をする必要もありません。

親が生きている場合は遺留分に注意

亡くなった方の親が生きている場合、親には遺留分があります。

配偶者と親が相続人の場合、親の遺留分は、遺産全体の1/6(遺留分全体1/2×親の法定相続分1/3)です。

「全財産を妻に」という遺言書も有効ですが、親から遺留分侵害額を請求される可能性があります。

遺留分については遺留分とはで解説しています。

夫婦それぞれが遺言書を書く

夫婦のどちらが先に亡くなるかはわからないので、夫婦それぞれが遺言書を書いておくのが基本です。

ただし、1枚の紙に夫婦2人で書く「共同遺言」は、民法で禁止されていて無効になります。

必ず1人1通ずつ書きましょう。

遺言書の文例

第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、遺言者の妻〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。

第2条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、前条記載の妻〇〇〇〇を指定する。

このように、財産を一つひとつ書かなくても「一切の財産」と書くことで、すべての財産を配偶者に残せます。

遺言執行者を指定しておくと、預金の解約や自宅の名義変更を、配偶者が単独で進めやすくなります。

自筆で書く場合の決まりは自筆証書遺言の書き方と文例、公証役場で作る場合は公正証書遺言の必要書類と費用で解説しています。

よく使う遺言の文例を集めた下書き用の文例集(Word・無料)も用意しています。清書は必ず手書きしてください。

配偶者が先に亡くなった場合の備え(予備的遺言)

「妻に相続させる」と書いていても、妻が先に亡くなると、その部分は効力を失います。

そのときに財産を誰に渡したいか(自分の兄弟、妻の親族、お世話になった人、寄付など)も、遺言書に書いておくことができます。

第3条 遺言者の死亡以前に妻〇〇〇〇が死亡したときは、遺言者は、前記の財産を、〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)に遺贈する。

夫婦2人とも亡くなったあと、財産はどこへ行く?

子どものいない夫婦の財産の行き先

子どものいない夫婦では、2人とも亡くなったあと、財産がどちらの親族に行くかが、亡くなる順番で変わります。

亡くなる順番 財産の流れ(遺言書がない場合)
夫が先、妻が後 夫の財産の多くが妻に渡り、妻が亡くなると、妻の親族(妻の兄弟姉妹など)が受け継ぐ
妻が先、夫が後 妻の財産の多くが夫に渡り、夫が亡くなると、夫の親族(夫の兄弟姉妹など)が受け継ぐ

たとえば、夫の実家から受け継いだ土地が、最終的に妻の兄弟に渡る、ということも起こります。

「夫の家の財産は夫の親族に戻したい」といった希望がある場合は、遺言書に書いておきましょう。

相続人が誰もいない場合

最後に残った配偶者に、親・兄弟姉妹・甥姪などの相続人がいない場合は、遺言書がなければ、財産は最終的に国のものになります。

お世話になった人や団体に財産を残したい場合は、遺言書で遺贈や寄付の先を決めておきましょう。

夫の親が亡くなったときの相続にも注意

夫が、夫の親より先に亡くなった場合、夫の親の相続では、妻は相続人になりません。

夫の分は、夫の子(代襲相続人)が受け継ぎますが、子どもがいない夫婦では、代わりに相続する人がいません。

そのため、夫の実家の財産は、夫の兄弟姉妹などが受け継ぎ、妻には渡りません。

夫の親が、世話をしてくれた妻に財産を残したい場合は、夫の親が遺言書を書いておく必要があります。

配偶者を守るそのほかの制度

  • 配偶者居住権:遺言書や遺産分割で、配偶者が自宅に住み続ける権利を設定できる。自宅の所有権をほかの相続人が取得しても、配偶者は住み続けられる
  • 配偶者の税額軽減:配偶者が受け取った遺産は、1億6,000万円か法定相続分のどちらか多い額まで、相続税がかからない
  • 生命保険の受取人:受取人を配偶者にしておけば、保険金は遺産分割の対象にならず、配偶者が受け取れる
  • 遺族年金:要件を満たせば、配偶者は遺族厚生年金などを受け取れる

相続税の考え方は相続税はいくらからかかる?、年金は年金受給者が亡くなったときの手続きで解説しています。

遺言書と一緒に準備しておきたいこと

準備 内容
財産の一覧を作る 預金の銀行名・支店、証券口座、不動産、保険をメモして夫婦で共有する
生命保険の受取人を確認する 受取人が亡くなった親のままになっていないか確認し、配偶者に変更する
任意後見契約 1人になったあと、判断能力が落ちたときに財産を管理してくれる人を決めておく
死後事務委任契約 最後に残った1人のために、葬儀・納骨・役所の手続きなどを頼む人を決めておく
お墓・供養の方針 お墓を継ぐ人がいない場合、墓じまいや永代供養を検討しておく

子どものいない夫婦は、2人とも亡くなったあとの手続きを頼める人がいないこともあります。

元気なうちに、夫婦で話し合っておきましょう。成年後見の仕組みは成年後見の申立て手続きで解説しています。

ケース別:子どものいない夫婦の相続

夫の両親が健在で、夫が亡くなった

相続人は、妻と夫の両親です。

法定相続分は、妻2/3、夫の父1/6、夫の母1/6になります。

両親には遺留分(合わせて1/6)があるので、遺言書で全財産を妻に残しても、遺留分を請求される可能性はあります。

夫の両親は亡くなり、夫の兄弟が3人いる

相続人は、妻と夫の兄弟3人です。

法定相続分は、妻3/4、兄弟はそれぞれ1/12です。

遺言書がなければ、4人で遺産分割協議をします。遺言書があれば、兄弟には遺留分がないので、遺言どおりに妻が受け継げます。

夫の兄弟の1人が先に亡くなり、その子(甥)がいる

亡くなった兄弟の分は、その子(甥・姪)が代わりに受け継ぎます。

相続人が増えるほど、話し合いと書類集めの負担が大きくなります。

夫婦が同時に亡くなった

事故などで夫婦が同時に亡くなり、どちらが先かわからない場合は、同時に亡くなったと推定され、夫婦の間では相続が起きません。

夫の財産は夫の親族へ、妻の財産は妻の親族へ、それぞれ受け継がれます。

配偶者が受け取る遺産にかかる相続税は相続税の配偶者控除(配偶者の税額軽減)で解説しています。

子どものいない夫婦のお墓の選び方は永代供養と樹木葬の違いで解説しています。

遺贈の税金や登記の費用は遺贈とはで説明しています。

相続人がいないときの財産の行方は相続財産清算人とはで説明しています。

相続税がかかりそうな場合や、申告が必要か迷う場合は、税理士に相談すると具体的な税額を確かめられます。

葬儀や片づけを頼む人がいないときの備えは死後事務委任契約とはで説明しています。

残された配偶者が自宅に住み続ける方法は配偶者居住権とはで説明しています。

よくある質問

夫の兄弟に相続を放棄してもらうことはできますか?

兄弟姉妹が自分の意思で家庭裁判所に相続放棄をすれば、相続人ではなくなります。

また、放棄をしなくても、遺産分割協議で「すべて妻が取得する」と合意してもらうこともできます。

ただし、どちらも兄弟姉妹の協力が必要です。確実なのは、生前に遺言書を書いておくことです。

妻の親は、夫の相続人になりますか?

なりません。

夫の相続人になるのは、夫の親・兄弟姉妹です。妻の親族は、夫の相続には関係しません。

夫婦で共有名義の自宅はどうなりますか?

夫の持分は、夫の相続人(妻と夫の親や兄弟姉妹)が受け継ぎます。

遺言書がないと、夫の持分について、夫の兄弟姉妹なども含めた遺産分割協議が必要です。

夫の兄弟の1人が行方不明です

遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるため、行方不明の相続人がいると、そのままでは協議ができません。

家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立て、管理人が行方不明の人の代わりに協議に参加します。

遺言書があれば、この手続きは必要ありません。

夫の兄弟が認知症です

判断能力が十分でない相続人は、そのままでは遺産分割協議に参加できません。

成年後見人などを選任してもらい、後見人が代わりに協議に参加することになります。

こうした負担を避けるためにも、遺言書を書いておくことが大切です。

遺言書は、いつ書けばいいですか?

判断能力がしっかりしているうちに、早めに書いておくのが基本です。

財産や家族の状況が変わったら、書き直すこともできます。

夫の兄弟に、遺言書があることを知らせる必要はありますか?

遺言書で財産を受け取らない相続人にも、遺言の内容を知らせるのが一般的です。

遺言執行者がいる場合、遺言執行者は、遺言の内容を相続人に通知する義務があります。

自筆の遺言書と公正証書遺言、どちらがいいですか?

自筆の遺言書は費用がかからず手軽ですが、書き方の決まりを守らないと無効になるおそれがあります。

法務局の保管制度を使えば、紛失や書き換えを防げ、家庭裁判所の検認も不要になります。

公正証書遺言は費用がかかりますが、公証人が作るので形式の不備がなく、原本が公証役場に保管されます。

兄弟姉妹と疎遠な場合は、争いを防ぐ意味でも、公正証書遺言か法務局の保管制度を使うと安心です。

配偶者に先に亡くなられたら、自分の遺言書は書き直すべきですか?

「妻に全財産を相続させる」という遺言書は、妻が先に亡くなると、その部分は効力を失います。

予備的な定めがなければ、財産の行き先を決め直すため、新しい遺言書を書きましょう。

まとめ

  • 子どものいない夫婦では、配偶者と一緒に親(いなければ兄弟姉妹・甥姪)が相続人になる
  • 相続分は、親と一緒なら配偶者2/3、兄弟姉妹と一緒なら配偶者3/4
  • 兄弟姉妹・甥姪には遺留分がない。遺言書で配偶者に全財産を残せる
  • 夫婦それぞれが1人1通の遺言書を書く。配偶者が先に亡くなった場合の行き先も決めておく
  • 2人とも亡くなったあとの財産は、亡くなる順番で行き先が変わる

監修者

行政書士(2018年11月開業)・社会保険労務士試験合格。

遺産分割協議書の作成や相続人の調査(戸籍の収集)など、相続の書類づくりに携わっています。

このサイトでは、法務局・裁判所・国税庁・金融機関などが公表している一次資料で確かめた内容だけを書いています。

詳しくは運営者情報をご覧ください。

参考資料:民法887条・889条・890条・900条・975条・1028条・1042条/国税庁 タックスアンサー「配偶者の税額の軽減」(2026年9月25日確認)

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